美濃焼とは
美濃焼は、岐阜県東濃地区を中心に作られている焼き物を指します。現在の土岐市・多治見市・瑞浪市周辺が美濃の国と呼ばれていたことから、美濃焼という名が広まったといわれています。
丈夫で扱いやすいため、食器としてよく使われています。多種多様なデザイン性も魅力的で、どんな料理にも使いやすいのもメリットのひとつです。和食や洋食など、食事のスタイルに合わせた食器を楽しめます。
日本では多くの陶磁器が生産されていますが、美濃焼はそれらの約半数を占めていることでも知られています。1978年には経済産業省指定の伝統的工芸品にも指定され、現在でもさまざまなシーンで活躍している陶磁器です。
美濃焼といってもいろいろな種類や形があるので、用途に合わせて選ぶのが楽しい陶磁器でもあります。
美濃焼の歴史は朝鮮半島から始まる
美濃焼の始まりは、今から約1300年前にさかのぼります。須恵器(すえき)・ろくろ・穴窯などの焼き物が、朝鮮半島から日本へと伝わったのが始まりです。それらの技術を受け継いだ日本の職人たちが、さまざまな焼き物を作るようになりました。
奈良時代に作られたとされる「美濃」の印が付いた「美濃刻印須恵器」が、現在でも岐阜市歴史博物館に展示されているそうです。
平安時代になると灰釉(かいゆう)と呼ばれる、灰を主成分とした釉(うわぐすり)を施した白瓷(しらし)が焼かれるようになります。平安時代末期になると白瓷(しらし)に変わり、一般の人に向けた山茶碗を生産するようになっていきました。
【安土桃山時代に黄金期を迎える】
安土桃山時代には茶の湯が流行したことにより、多くの有名な茶人らによって美濃焼が使われるようになります。現代の美濃焼の基本様式となる織部・志野・黄瀬戸・瀬戸黒の4つは、この頃に誕生しました。斬新な見た目や豊かな色彩は、当時の庶民にとっては革命的でした。
時代が進むとさらに茶の湯の流行が深まり、江戸時代頃までは美濃焼が幅広く愛用されていたそうです。江戸時代中期になると、それまで茶器を中心に作られていた美濃焼も日常的に使う雑貨へと変化していきます。
江戸時代後半には白い磁器が登場し、長石と珪石を混ぜた土を使って磁器が作られるようになりました。
【明治時代にはコスト削減に成功】
明治時代以降は、製品別分業制の導入により低コストで美濃焼の作成が実現しました。その後、電気の供給や機械化が進んだことで生産規模が拡大していきます。高級品の需要やタイルの製造が増えていき、生産と技術力の向上も一気に進んでいきました。
そして現在では、陶磁器生産量が全国トップクラスを誇る焼き物として成長し続けています。
多種多様な様式を持つのが特徴の美濃焼
美濃焼の大きな特徴は多種多様の様式を持っていることです。ほかの焼き物は1つの技法を示していることが多いのに対して、美濃焼は伝統的工芸品として15種類もの指定を受けています。
あまりにも種類が多くて様式が定まらないために、「美濃焼の特徴は、特徴がないことだ」といわれることがあるほどです。15種類の中でも有名なのが「美濃桃山陶」と呼ばれている、織部・志野・黄瀬戸・瀬戸黒の4つの様式。これらは焼き物としてだけでなく、美術品としても人気があります。
【織部は千利休の弟子が確立】
織部は千利休の弟子である古田織部によって確立された焼き物です。緑釉が使われ、個性的な形や模様が特徴の焼き物としても知られています。大きなゆがみのある個性的なデザインの焼き物も多く、インパクトのある風合いを楽しめるのも魅力的です。
【志野は日本初の白い陶器】
志野は、日本で初めての白い陶器といわれています。釉の下から見える緋色の模様や、表面の柚肌と呼ばれるザラザラとした触り心地や穴が特徴です。桃山時代を代表する焼き物ともいわれ、ほんのりとした赤みがあるのも魅力的。
【黄瀬戸は木褐色の焼き物】
黄瀬戸は、透き通るような温かみのある黄褐色を帯びた焼き物です。線や花などの模様が施されている作品が多いのが特徴。焦げや褐色を楽しむ「あやめ手」、厚みのあるシンプルなデザインの「ぐいのみ手」などが有名です。
【瀬戸黒は光沢のある黒色が特徴】
瀬戸黒は鉄釉を施しているのが特徴で、高温の窯で焼き上げている途中で窯から取り出します。途中で引き出す技法は「引き出し黒」と呼ばれ、出してから水で急速に冷やすことにより黒色の光沢を表現しています。
現代での使われ方とお手入れ方法
美濃焼には長い歴史があり、食器類の生産量が全国の約半数を占めています。日本の食器として現代でも日常的に使われており、私たちの生活に溶け込んでいるといえるでしょう。美濃焼は食器やマグカップ、花瓶などさまざまな形で日常生活に取り入れられています。
近年では美濃焼の伝統技術を取り入れた、デザイン性が高い製品が登場し始めました。形や色などの種類が豊富なので、自分好みの美濃焼を気軽に購入できるでしょう。
美濃焼を含む陶磁器は吸水性の高いものが多いので、米のとぎ汁などを沸かした鍋で20~30分煮てから使うのがおすすめです。細かな隙間にでんぷん質が入り込み、汚れなどが付きにくくなります。
美濃焼の見学・体験ができる場所
安土桃山陶磁の里 ヴォイス工房
所在地 | 岐阜県多治見市東町1丁目 9-17 |
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電話番号 | 0572-25-2233 |
定休日 | 毎週火曜日(祝日を除く) |
営業時間 | 10:00~18:00(受付は16:00まで) |
HP | http://kds-kiln.co.jp/v-kobo/ |
備考 | 見学、体験、購入 |
だち窯やめぐり
所在地 | 岐阜県土岐市駄知町2321-148(丹山窯) |
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電話番号 | 0572-59-4188 |
定休日 | お問い合わせください |
営業時間 | 10:00~16:00 |
HP | http://dachikamaya.net/ |
備考 | 窯元めぐり、作品の購入 |