藍染とは
藍染(あいぞめ)とは、おもに徳島県で生産されている伝統的な染物です。
日本には西暦600年代に藍染の技術が中国から輸入されましたが、本格的に藍染が広まったのは戦国時代以降でした。
明治には外国人からジャパンブルーと称えられるなど、日本を代表するカラーとなった藍染は、徳島県の伝統的な産業として継承されています。
藍染の歴史と、阿波藍を保護した蜂須賀家政の功績
藍染の歴史は大変古く、600年代に遣唐使を経由して日本に伝わりました。
奈良時代の日本では東大寺の正倉院に藍染の織物が納められ、法隆寺にもたくさんの藍染が残されています。
しかし古代の日本の中心だった公家たちには藍染はそれほど関心を持たなかったようで、どちらかというと派手な服装が多く着用されていました。
鎌倉時代に入ると武士が中心的な存在となり、命を懸けて戦う武士たちにとって藍色は縁起の良い色としてもてはやされました。
それがきっかけで藍染が多く生産されることに。
また、藍染には生地を強化する効果や、虫よけや殺菌効果などもあったため、実用的な面でも人気となりました。
需要が高まったことで、藍染の原料である蓼藍(たであい)が全国で栽培されるようになります。
なかでも「阿波藍」と呼ばれた徳島県産の藍染が最も高品質との評価を獲得。
元々阿波は吉野川の氾濫が多く、稲作の安定した生産が困難な地域だったこともあり、洪水の影響を受けにくい藍の栽培が盛んになりました。
さらに江戸時代には蜂須賀氏が阿波の統治を命じられ、幼い藩主を補佐した蜂須賀家政が旧領から連れてきた藍染職人の活動を奨励します。
これらの要因が重なって、藍染は阿波の基幹産業として発展していくことに。
やがて藍染は着物など庶民の生活に広く浸透し、明治には藍染の生産が最盛期を迎えます。
しかし明治後期になると安価な合成染料やインド藍などに押され、伝統的な藍染は徐々に衰退していきました。
戦時中には藍の栽培が禁止されるなど困難な状況にありましたが、それでも伝統を守ってきた職人たちによって現在に受け継がれています。
繊細な感覚と熟練の技術で作られる藍染の特徴
藍染の特徴のひとつは、どんな素材の生地にも染まりやすいことです。
中でも木綿は特に美しく染まり、江戸時代以降の庶民の衣服に木綿が多かったことから、それに合わせて藍染も広く庶民に浸透していきました。
独特な美しさを持つ色合いは日本を訪れた外国人からも「ジャパンブルー」と賞賛され、日本を代表するカラーとして認知されました。
また、藍染には実用的な特徴も多く、そのひとつは丈夫で長持ちするということです。
藍染された生地は強度が向上し、耐久性の高い衣服として庶民たちに重宝されてきました。
さらに藍には殺菌効果もあり、藍染の衣服は虫がつきにくいというメリットも持っています。
藍染は色の美しさもさることながら、さまざまな模様を施されていることも特徴です。
模様は藍の濃淡で表現され、その基本となるのは「段染め」と呼ばれるグラデーション。
シンプルながらも奥深い魅力を秘めています。
そのほかにも、雲のような模様の「むらくも染め」や、花絞り、巻縫い絞りといった「絞り染め」などの美しい模様が描かれています。
日本で古くから行われてきた藍染は「蓼藍」が使用され、その代表的な産地が現在の徳島県でしたが、近年ではインド藍が多く使用されています。
藍染は、細かく切り刻まれた藍にこまめに水を含ませて混ぜ合わせ、発酵させて堆肥状にし、「すくも」と呼ばれる染料に加工して使用されます。
この「すくも」を製造する職人のことを「藍師」と呼び、水加減や発酵の温度調節は熟練の技術が必要で、発酵には100日ほどの期間がかかります。
藍染の現代での使われ方とお手入れ方法
藍染は現在、徳島県で全国の約60%を生産しています。
伝統的な用途としては、着物や下着、手ぬぐい、のれん、蚊帳などに使用されてきました。
近年ではそのほかにもシャツやハンカチ、靴下といった衣類や、カーテンやテーブルクロスなどにも使用されています。
さらに布製品にとどまらず、革製品やフローリングといったものにまで藍染の製品が生産されています。
衣類としての藍染が再評価されてきた要因のひとつとして、天然の効能があるということが挙げられます。
殺菌効果があり、虫よけにもなるため、アトピー性皮膚炎など皮膚の弱い方が身に着けると効果的であるとの意見もあります。
冷えを防ぐ効果も期待できるため、健康的な衣類として藍染を使用する人が増えているのです。
その効能から、近年では藍を食材に添加した健康食品も登場しています。
藍染は、初めて使用する前にはたっぷりの水やぬるま湯で一度「色落とし」を行うことで、快適に使用することができます。
使用を開始してからのお手入れ方法は、手洗いが基本。
洗濯機で洗う場合はほかの衣類に色移りしないよう別々に洗うと良いでしょう。
漂白剤の使用や、漂白剤の添加された洗剤は使用しないでください。
保管するときは直射日光に当たらないように注意しましょう。
藍染の見学・体験ができる場所
藍染工芸館
所在地 | 徳島県徳島市応神町東貞方西川淵81-1 |
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電話番号 | 088-641-3181 |
定休日 | 44197 |
営業時間 | 9:00~17:00 |
HP | http://www.awaai.jp/ |
備考 | 【藍染工程見学 ※団体のみ】300円 【藍染体験】1,000円~ |
藍の館
所在地 | 徳島県板野郡藍住町徳命字前須西172 |
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電話番号 | 088-692-6317 |
定休日 | 毎週火曜日(祝日の場合は営業) |
営業時間 | 9:00~17:00(藍染体験は16:00まで) |
HP | https://www.town.aizumi.lg.jp/ainoyakata/ |
備考 | 【料金】大人300円、学生200円、小人150円 |