会津塗とは
会津塗(あいづぬり)は、福島県で作られている伝統的な漆器です。会津地方を中心に生産されており、お椀や重箱、お盆、茶托(ちゃたく)など、さまざまな製品があります。
会津塗の魅力は、人々の生活にしっかりと寄り添った使いやすさ。輪島塗などの高級漆器に比べて実用性が高く、多くの人から親しまれています。
会津塗の歴史と漆器作りの進化
会津の漆器作りの発祥は、室町時代です。当時、会津を治めていた葦名盛信(あしな もりのぶ)は、地域の産業として漆の植林を始めました。その漆を使い、お盆やお椀などが作られるようになったのです。
新しく始めた漆器作りが定着した理由には、会津の環境があります。自然豊かな盆地である会津地方は、漆の製品に適した湿潤の気候が特徴。周囲を山に囲まれていたため、材料となる木材も豊富にあり、多くの漆器が作られるようになりました。
会津塗が産業として本格化したのは、安土桃山時代のこと。会津の領主であった蒲生氏郷(がもう うじさと)が、腕の立つ木地師(きじし)や塗師(ぬし)を招き、当時の最先端技術を取り入れました。その結果、漆の栽培や加工、蒔絵(まきえ)などの加飾(かしょく)を一貫して行うようになり、会津塗の技術は大きく発展していきます。
江戸時代に入ると、歴代の藩主が会津塗の保護を奨励。漆の植樹や職人の育成、販路の拡大などが行われます。この活動によって知名度が上昇した会津塗は、次第に海外へ輸出されるようになり、アメリカやオランダなどでも高い人気を獲得しました。
1868年、戊辰(ぼしん)戦争が始まると、会津塗は大きな打撃を受け、生産量が低下。産地としての力も弱まり、苦しい状況が続くことになります。しかし、精力的な復興活動を経て徐々に回復し、1872年にはパリ万国博覧会に出品。明治時代中期になると、日本有数の産地として復活しました。
大正時代には、生産工程の一部が機械化。技術の高級化も進むことになります。その結果、高級な製品と大衆向けの製品が両方生産されるようになり、会津塗の需要はますます増加していったのです。
高度経済成長期に入ると、素地にプラスチックを用いた製品が登場。より手軽に使える製品として、多くの人から重宝されるようになります。この出来事がきっかけで大衆向けの会津塗が人気になり、現在のような実用性を重視した製品が増えていきました。
1975年には、国から伝統的工芸品に指定され、さらに注目度が上昇。2019年には、会津若松市の指定無形文化財にも認定され、伝統的な技術の継承が行われています。
芸術性と機能性を融合させた会津塗の特徴
会津塗の特徴は、蒔絵などの美しい加飾です。日本人好みの縁起の良い図柄は、温もりや柔らかさを感じられるものであり、多くの人から愛されています。
蒔絵にはさまざまな種類があり、朱の粉を蒔く「朱磨き(しゅみがき)」、朱漆で網目を描く「網絵(あみえ)」、細かい金粉を蒔く「消粉絵蒔(けしふんえまき)」など、美麗な装飾が多数。明治時代に始まって以降現在まで継承されている技法もあり、伝統を大切にしながら作られています。
また、優れた塗りの技法も、会津塗の美しさを高めている要素です。塗りの工程は、下塗、中塗、上塗の3つ。下塗と中塗では、漆を塗るだけでなく、研磨後に細かい傷がないか確認しています。
上塗の一般的な技法である「花塗り」は、油で光沢をもたせた漆を、刷毛(はけ)で丁寧に塗っていく作業。ほこりの付着を防ぎつつ、色ムラが出ないように塗り上げる繊細な工程であり、職人の高い技術が必要です。
黒塗の上に大麦や籾殻(もみがら)を蒔く「金虫喰塗り(きんむしくいぬり)」は、独特の模様を表現できる技法。乾燥後に大麦などを取り除き、銀粉を蒔いてから炭で磨くことにより、美しい製品に仕上げていきます。
会津塗は、見た目だけでなく、機能性を追求していることも特徴のひとつ。長い歴史の中で研究が重ねられ、次第に洗練されていった会津塗の形は、日本の食文化に適したものになっています。そのため、使いやすさは抜群。高級なものから手ごろなものまで、多くの製品が作られている会津塗ですが、日用品としての製品は特に高い人気があります。
会津塗の現在とお手入れのコツ
現在の会津塗は、昔ながらのお椀やお盆を丁寧に作りながらも、生活様式の変化に合わせた新商品を開発しています。和食のための漆器だけでなく、洋食に違和感なくなじむ漆器も数多く登場。ほかにも、カトラリーやアクセサリーなどが注目を集めており、新しいファンを増やしています。
現代の生活に合わせた製品は、建築の分野でも人気。会津塗の技術を用いたコンセントプレートやスイッチパネルなどが開発され、飲食以外の場面でも、多くの人が伝統的な美しさを楽しんでいます。
質の高い会津塗を長持ちさせるには、使ったあとの手入れが大切です。食事後の油汚れなどは、一般的な食器用中性洗剤を使い、柔らかいスポンジで優しく洗ってください。研磨剤入りの洗剤は表面を傷つけてしまうので、会津塗には使わないようにしましょう。
米粒などがこびりついた場合は、水やお湯でふやけさせてから落とす方法がおすすめです。汚れが浮き上がる状態になれば、軽く擦っただけでも簡単に落とすことができます。
水跡で汚さないためのコツは、完全に乾かないうちに拭くこと。水を切ったらすぐ拭くようにすると、乾いても汚れが目立たないため、いつでもきれいな蒔絵を楽しめます。
会津塗の見学・体験ができる場所
会津塗伝承館 鈴善
所在地 | 福島県会津若松市中央1-3-28 |
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電話番号 | 0242-22-0680 |
定休日 | 不定休 |
営業時間 | 9:00~17:00 |
HP | https://suzuzen.com/ |
備考 | 会津塗や美術作品などの展示、蒔絵体験 |
会津漆器工房 鈴武
所在地 | 福島県会津若松市門田町一ノ堰 会津漆器工業団地内1973-4 |
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電話番号 | 0242-27-9426 |
定休日 | 要問い合わせ |
営業時間 | 9:00~15:00 |
HP | http://www.suzutake.net/ |
備考 | 工房見学、蒔絵体験教室 |