秋田杉樽桶とは
秋田杉桶樽(あきたすぎおけたる)とは、主に秋田県能代市(のしろし)や大館市(おおだてし)で作られている伝統工芸品です。
桶と樽の違いは簡単にいうと蓋の有無ですが、使っている材料も少し異なります。桶は柾目(まさめ)の材料を使って、箍(たが)に竹や銅で締めて底板をつけたもの。一方、樽は桶とほぼ同じ形ですが材料に板目(いため)を使用し、蓋もついています。
秋田杉桶樽の発展に関係しているのは、秋田の地理的環境です。豪雪地帯のため、冬の産業が乏しかった秋田県。そこで発展したのが木材の加工技術です。これによって有名な曲げわっぱや秋田杉桶樽が作られるようになりました。
材料として使う木材には日本三大美林に数えられる秋田杉を使用し、製造もひとつひとつが職人の手作業でおこなわれています。
秋田杉のもつ芳醇な香りや耐久性が魅力の秋田杉桶樽。一時はプラスチック製品の普及により姿を消してしまいますが、手作りによる質の高さが徐々に見直され、桶や樽以外の製品も作られるようになりました。
歴史ある秋田杉桶樽
秋田杉桶樽の起源は平安時代にまでさかのぼります。秋田市の秋田城遺跡から、平安後期のものとみられる桶と樽の一部が発見されました。
秋田藩の家老による「梅津政景日記」にて、旧雄勝町の酒屋で桶が使用されていたとの記録も残っていることから、江戸時代には現在のような桶が作られていたことがわかります。
秋田県を代表する旧角館町の武家屋敷・青柳家からは、現在のものと形の変わらない1830年ごろの手桶や岡持(おかもち)も発見。
明治から大正の時代には、洗濯用のたらいやおひつとして秋田杉桶樽がよく使われました。しかし、1960年ごろからプラスチック製品が普及し始め、 秋田杉桶樽の需要は減ってしまいます。
それでもなお秋田杉桶樽のもつ伝統や魅力は評価され、1984年に経済産業大臣が指定する国の伝統的工芸品になりました。
近年は木のぬくもりや質の良さが人々の目にとまり、ふたたび注目を集めています。
天然の秋田杉を使った秋田杉桶樽の特徴
秋田杉桶樽の特徴は、秋田杉のもつ独特な香りとあたたかみ。年輪がそろっていることも魅力のひとつで、木目がたいへん美しい木材としても知られています。
日本三大美林にも数えられる秋田杉。日本三大美林とは全国でも特に美しく優れた林のことで、秋田県の「秋田杉」・青森県の「青森ひば」・長野県の「木曽ひのき」の3種の林を指しています。
秋田杉の刺激のない木の香りは心を和ませ、あたたかみのある風合いはインテリアとしての役割も果たします。
そんな秋田杉を使用した秋田杉桶樽の製造工程は大きく分けて6つ。
まずは秋田杉の丸太から柾目板と板目板を割り出し、「榑(くれ)」という短冊状の板にします。
その後におこなうのが「銑(せん)がり」です。銑という特殊な刃物で板を目的のサイズまで削っていきます。
銑がりが終わると「正直(しょうじき)突き」をおこないます。正直とは大きなかんなのことです。この工程で、板と板がぴったり合うようにかんなをかけていきます。
板を合わせた後、桶の形にするために竹釘で板をつなぎ合わせます。これが「くれ立て」という作業です。
最後に桶のまわりに「たが」をはめ、底板を入れて締めます。かんなとヤスリでさらに表面をなめらかにして完成となります。
このようにしてでき上がる秋田杉桶樽は、職人芸の光る伝統的な逸品なのです。
秋田杉桶樽の現代での使われ方とお手入れ方法
昔から桶や樽を中心に作られていた秋田杉桶樽。近年では桶・樽以外にも、おひつやジョッキなど、現代のライフスタイルに合った商品も生産・販売されています。
天然の秋田杉を使ってすべて手作業で作っているため、仕上がりも色もひとつとして同じものはありません。
シミ・変色があるかもしれませんが、丁寧にお手入れすることでそれらも味わい深いものになります。
そこで秋田杉桶樽を使ううえでの注意すべき点をいくつか紹介します。
まず気をつけるのが保管場所です。保管場所として、直射日光が当たる場所・暖房器具の近くは控えることがおすすめ。
秋田杉桶樽は乾燥に弱く、極度に乾燥した場所に置いておくと水漏れが起こる可能性があります。長期間保管するときは常温の部屋に置くようにしてください。使用後は洗った後にやわらかい布で水気を拭き取るようにしてお手入れをします。
秋田杉桶樽は使えば使うほど味の出てくる伝統工芸品です。きちんとメンテナンスをして、長く付き合っていけるようにしましょう。
秋田杉樽桶の見学・体験ができる場所
森林資料館 五城目城
所在地 | 秋田県南秋田郡五城目町字兎品沢62-2 |
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電話番号 | 018-852-3110 |
定休日 | 冬季休館(12月 1日~ 3月31日) |
営業時間 | 4月1日~10月31日/9:00~17:00 |
HP | http://www.town.gojome.akita.jp/miru/871.html |
備考 |
入館料:無料 秋田杉に関わる林業の歴史や職人の仕事風景の再現、秋田杉桶樽の展示を見ることができます。 |
株式会社 沓澤製材所(くつざわせいさくじょ)
所在地 | 秋田県大館市釈迦内宇街道上154番地 |
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電話番号 | 0186-48-3141 |
定休日 | 日・祝祭日・その他(夏季・年末年始の休業日など) |
営業時間 | 9:00〜17:00 |
HP | https://www.tarutomi-kamata.com/ |
備考 | 秋田杉樽桶の製作所です。オンラインショップにて販売もおこなっています。 |