播州三木打刃物とは
播州三木打刃物(ばんしゅうみきうちはもの)とは、兵庫県三木市で生産されている伝統的な刃物です。
三木は古代から「鍛冶のまち」として栄えてきた歴史があり、生産される刃物は国の伝統的工芸品に指定されています。
現在でも多くの工房が存在し、多種多様なニーズに応える播州三木打刃物は、全国の職人たちに愛用されている優れた刃物です。
播州三木打刃物の歴史と、羽柴秀吉の功罪
播州三木打刃物の歴史は非常に古く、ルーツとなっているのは古代から当地で行われていた大和鍛冶。
播磨国風土記(はりまのくにふどき)にもその記述があります。
三木は鍛冶の神である天目一箇神(あめのまひとつのかみ)のゆかりの地でもあり、現在も三木の各地で鍛冶の神がまつられています。
西暦400年代には百済から渡来人が三木に移住し、彼らが伝えた韓鍛冶が大和鍛冶と融合したことにより、三木は畿内における鍛冶の一大生産地として確立しました。
その後も三木の鍛冶の歴史は長く続きましたが、転機となったのは安土桃山時代に三木城下で起きた合戦です。
天下統一を目前にしていた織田信長の命を受けた羽柴秀吉が、三木城の別所長治を攻め滅ぼし、その戦乱の影響で街は荒れ果て、歴史のある寺社を含む建物のほとんどが焼けてしまいました。
そこで秀吉は三木の街を復興させるために町民からの税を免除し、神社仏閣や家屋を建て直すため、大勢の大工を招きました。
多数の大工道具が必要となり鍛冶職人も各地から三木城下に集まってきたことで、元々あった三木の鍛冶産業がさらに発展しました。
三木の復興が一段落したのち、大工たちは仕事を求めて京や大坂に出稼ぎに行くようになると、その出稼ぎ先で大工たちが使用していた道具の素晴らしさが評判になります。
こうして三木の大工道具が高い評価を受け、名声が広まったことにより、三木は鍛冶の街として全国に知られるようになりました。
江戸時代には、当時世界最大級の都市だった江戸の街の家屋建築に三木の大工道具が広く使用され、この頃に「播州三木打刃物」として確立されていきました。
明治には西洋からの技術に押されて播州三木打刃物は一時衰退したときもありましたが、1996年に国の伝統的工芸品に指定され、現在は職人たちが技術を継承して伝統を守っています。
建築道具に特化した播州三木打刃物の特徴
播州三木打刃物は、江戸時代に確立された鍛造の技術と、近代以降に導入された新しい技術が融合されていることが特徴です。
それにより、古くから生産している工具のみならず、ドリルや電動鋸の刃といった機械工具の刃物の生産も可能になっています。
播州三木打刃物は、大工道具に限らず建築工事に使用されるさまざまな道具を生産していることも特徴です。
その中でも、鋸(のこぎり)、鑿(のみ)、鉋(かんな)、鏝(こて)、小刀(こがたな)の5品目が伝統的工芸品に指定され、中心的な生産品となっています。
特に鋸は古くから播州三木打刃物を代表する生産品として有名で、前挽(まえびき)の鋸は江戸時代に大火で材木が大量に必要となったときに重宝されました。
現在でも三木の鋸は高い全国シェアを確保しており、一大ブランドとなっています。
また、鏝のようにほかの産地ではあまり生産していない道具を生産していることも播州三木打刃物の特徴。
鏝の生産に特化した鍛冶工房も存在しています。
現在、三木には家族経営や小規模の鍛冶工房が多く、それぞれが得意な生産品を抱えているため、多品種少量生産に特化した生産地といえます。
播州三木打刃物の現代での使われ方とお手入れ方法
播州三木打刃物は、家庭用の日曜大工用品や生活用品、工作用の工具も生産しています。
小刀はその代表的な生産品で、そのほかには、はさみ・包丁・ナイフなどがあります。
また、近年のアウトドアブームの流れを受け、キャンプ用品やレジャー用品、釣り・狩猟などに使用するサバイバルナイフなども生産しています。
播州三木打刃物は多くの種類の刃物があるため、それぞれの刃物に合わせたお手入れが必要ですが、基本的には錆びを防ぐことが最も重要です。
鋸のお手入れは、使用後に刃の間に詰まった木くずを落とすことが必要で、これを怠ると木くずに含まれる水分で鋸の刃が錆びてしまいます。
木くずを落とすときに直接手で刃に触れると怪我をするので、使用済みの歯ブラシなどで木くずを落とすとよいでしょう。
さらに注意すべきなのは生木を切ったときで、鋸の刃に樹液やヤニが付着すると簡単に落とすことはできず、放置しておくと錆びの原因にもなります。
樹液やヤニが付着した場合は、ヤニを落とすクリーナーを使用して除去するのがよいでしょう。
また、全ての刃物においていえることは、錆びを防止するために使用後は潤滑油や植物油を塗り、鞘などのケースに収納しておくことが基本です。
播州三木打刃物の見学・体験ができる場所
三木工業協同組合
所在地 | 兵庫県三木市本町2丁目1番18号 |
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電話番号 | 0794-82-3154 |
定休日 | 土日祝 |
営業時間 | 10:00〜17:00 |
HP | https://www.miki-kanamono.or.jp/ |
備考 | 【見学の予約方法】 各企業に記載の予約方法(FAX又はメール)に、必要事項をご記入の上、見学希望日の2ヶ月前までにお問い合わせください。 各企業からの返信をもって予約確定となります。 【注意事項】 火花が飛ぶ工場もあるので、汚れてもよい服装でお越しください。 見学時の商品購入については各企業にお問い合わせください。 |
道の駅みき2F 金物展示即売館
所在地 | 兵庫県三木市福井字三木山2426 |
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電話番号 | 0794-82-7050 |
定休日 | 年中無休 |
営業時間 | 9:00~17:00 |
HP | http://www.kanamono.ne.jp/home.html |
備考 | 伝統的工芸品をはじめ約3万点の刃物を販売しています。 隣接する「かじやの里メッセみき」では定期的に展示会やイベントを行っています。 |