房州うちわとは
千葉県南部の主に館山市、南房総市で古くから手作業によって生産される「房州(ぼうしゅう)うちわ」。京都の「京うちわ」、香川県の「丸亀うちわ」とともに「日本三大うちわ」のひとつとされます。また、房州うちわの優れた伝統と、その伝承が認められ、2003年には経済産業大臣指定の「伝統的工芸品」に選ばれています。
房州うちわは、千葉の房総半島南部で採れる女竹を材料とし、竹を活かした「丸柄」と半円の美しい「窓」が特徴。元々は涼をとる実用品でしたが、最近では装飾品として大変人気を博しています。そのため、大型のうちわや新たなデザインのうちわも数多く作られています。
「日本三大うちわ」となった「房州うちわ」の歴史
江戸時代後期、関東でうちわ生産が始まりました。そして、うちわの材料となる良質な女竹の産地として、千葉県南部の「房州」は名を馳せました。
房州の女竹は、那古港(現在の館山市那古)から江戸へ出荷され、江戸でうちわが生産されました。しかし、明治時代に入り1878年頃からは房州でも徐々に生産が行われるように。房州のうちわ生産は那古で始まり、周辺へ広がっていきました。
房州でのうちわ生産が大きく発展をした契機には、岩城惣五郎の存在が挙げられます。房州の那古に住む岩城惣五郎は、1885年に東京からうちわ職人を雇い入れ、生産に本腰を入れました。その結果、うちわは房州の名産品として認知されるまでに成長したのです。
1923年、関東大震災によって日本橋堀江町河岸のうちわ問屋は打撃を受けました。移転を余儀なくされた問屋は、女竹の産地である那古港近くの船形町(現在の館山市船形)に移転。房州でのうちわ作りはますます盛んになりました。
房州うちわの生産地となった那古、船形、富浦(現在の南房総市富浦町)は漁師町でした。そこで、男性が漁に出る間の女性の手内職としてうちわ作りは歓迎され、大正末期から昭和初期には生産の最盛期を迎えました。
しかし、扇風機やエアコンなどが普及するにつれて、うちわは実用品としての需要が減り、生産も減少。こうした中、房州うちわは2003年に千葉県で唯一の経済産業大臣指定の「伝統的工芸品」として認定されました。職人の伝統的な手仕事によって作り出される房州うちわは、現在、装飾品としても進化し多くの人を魅了し続けています。
21もの工程がある房州うちわの特徴
房州うちわの最大の特徴は、女竹の丸みをそのまま使用した持ち手の「丸柄」と、半円の格子模様の美しい「窓」でしょう。房州の女竹ならではの魅力的な飴色が存分に活かされています。また、使用される女竹は柔軟性があり丈夫でしなやかです。
うちわ作りには21もの工程があり、そのすべてが手作業です。
まず、房州産女竹の伐採から始まります。竹の肉が最も締まっている寒い季節に、うちわ作りに最適な太さと節の竹を選んで行われます。伐採した竹は刃で皮を切り取り、磨いてから乾燥させ、竹に切れ目を4つ入れてから一昼夜水に浸けます。
次は、うちわの骨を作る工程に入ります。太さ1.5センチ程度の竹を48~64等分に割き、柄の部分に穴を開けて糸で編んでいきます。骨とよばれる割いた竹を広げ、うちわの形とすることで、窓が姿を現します。骨のねじれを防ぐために、目拾いや穂刈りをし、コンロで焼きながら整えます。
整えた後は、紙や布を貼り、はみ出した骨を裁ち落とします。ふちとりの紙で周囲を整え、ヘラで盛り上げるようにして柄尻に膠(にかわ)の混合物を塗ります、最後に1本ずつプレス機に通し、骨の筋が出るよう仕上て完成です。
房州うちわは1日に4、5枚作るので精いっぱい。このことからも、とても手の掛かった名産品といえるでしょう。
房州うちわの利用シーン・使用上の注意点
房州うちわはうちわの中では高級品であり、贈答品やインテリアとして非常に愛されています。そのため、現在は飾ることを意識したデザインのうちわが増えています。もちろん涼をとる道具として実用的な使い方を楽しむこともできるでしょう。
房州うちわの形は、定番の丸型、滑らかな曲線の卵型、柄が長く優雅な柄長、約30センチの大型、幅の広い楕円型などさまざまです。また、特注デザインや竹の根を取り入れた珍しい品も作られています。表紙の素材には、和紙や絞りやゆかた地などの布が使われます。
使用においては、材質が竹なので、ささくれ部分を衣類などに引っ掛けないように注意しましょう。
水に濡れた場合は、水を拭き取り、日陰の風通しの良い場所を選びしっかり乾かすことも大切です。
日焼けの心配があるので、干す際のみならず、飾る際にも直射日光に当てないよう留意すると良いでしょう。
基本的に丈夫な作りになっていますが、うちわ骨の部分は竹製であるため、極度の乾燥でひび割れする可能性があります。
火気や高熱のものの近くでの使用も控えましょう。また、アルコール系溶剤、漂白剤の使用は避けてください。
持って振り回したりすると破損の原因に繋がります。
房州うちわの見学・体験ができる場所
うちわの太田屋
所在地 | 千葉県南房総市富浦町多田良1193 |
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電話番号 | 0470-33-2792 |
定休日 | ご確認ください |
営業時間 | 9:00 ~ 16:00 |
HP | http://ota-ya.net/ |
備考 | 販売、うちわ作り体験 |
うやま工房
所在地 | 千葉県南房総市本織2040 |
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電話番号 | 0470-36-2130 |
定休日 | 電話にてご確認ください |
営業時間 | 電話にてご確認ください |
HP | https://www.instagram.com/uyama_koubou/ |
備考 | 販売、うちわ作り体験 |