香川漆器とは
香川漆器とは、香川県高松市を中心に作られている漆器です。北海道から沖縄まで販路を伸ばし、まさに「漆器王国の礎」ともいうべき香川漆器。
伝統的な5つの技法は多くの名工や巨匠によって守り続けられ、今日まで受け継がれてきました。蒟醤(きんま)・存清(ぞんせい)・彫漆(ちょうしつ)・後藤塗(ごとうぬり)・象谷塗(ぞうこくぬり)…これら5つの技法はいずれも芸術的で、優美な絵柄や艶が特徴的です。
香川漆器は食器やお盆などの日用品から、時計や置物といった室内インテリアとしても有名で、今なお広く親しまれています。その人気ぶりは、海を超え、欧米をはじめとした世界各国で愛されるほどです。
香川漆器の歴史と玉楮象谷
香川漆器のはじまりは、江戸時代までさかのぼります。讃岐高松を治めた歴代藩主は、文化芸術を積極的に励行。茶道や華道と共に、漆芸も盛んに行われるようになりました。そして、江戸時代末期に登場した玉楮象谷(たまかじぞうこく)という人物によって、香川の漆芸はさらに洗練されていきます。
玉楮象谷は京都の東本願寺や大徳寺を訪れ、多くの漆芸作品と触れ合う機会を持っていました。彼はその後、京都で学び得た知識を高松へ持ち帰り、藩主のお抱え職人へ任命されることになります。
藩の宝蔵品を管理・修理する中で、自らの漆芸技法を極めていった玉楮象谷。その努力が実を結んだ結果、後に「香川の三技法」と呼ばれる蒟醤・存清・彫漆が生み出されたのです。
その後、時代が目まぐるしく変わる中でも、脈々と受け継がれていった香川漆器。第二次世界大戦後に成立した文化財保護法により、無形文化財として香川の蒟醤と存清が選定されました。
1955年には重要無形文化財保持者、いわゆる「人間国宝」として香川漆器の職人が2人選ばれています。そして1976年、国の伝統的工芸品に指定され、今日の漆器王国へと繋がっていったのです。
味わい深い塗りと装飾が目を引く香川漆器の特徴
香川漆器を語る上で欠かせないのが、5つの伝統的な技法です。代表的な技法である「蒟醤」は充填する漆の色ごとに彫り方を変え、最後に表面を平らに研ぐことになります。この技法により、香川漆器は味わい深く、美しい漆器へと生まれ変わるのです。
また「存清」は、主にお盆や茶櫃(ちゃひつ)にあしらわれる装飾技法です。黒地や赤地といった漆面に描かれる絵は毛彫りで仕上げるため、細やかで繊細。贈り物としても人気が高く、欧米の愛好者も少なくありません。
「彫漆」は、漆芸の中で最も漆の特長を活かした技法。出したい漆の色まで表面を彫り下げるため、職人の確かな腕と根気が必要な技法でもあります。
「後藤塗」は朱色をメインとした塗りであるのに対し、「象谷塗」は漆本来の黒色をメインとした塗りとなっています。
特に「象谷塗」は香川漆器の創始者・玉楮象谷の名を冠すだけあって、味わい深く、渋い艶が魅力的です。渦を巻いたような漆の模様は、まるで一滴の滴が水面に落ちたときのよう。装飾が少ない分、漆本来の美しさを目の当たりにできます。
このように、さまざまな伝統的技法によって作り上げられた香川漆器は、熱伝導率が低く、器の温度が変化しにくい特徴があります。温かい、あるいは冷たい料理は温度変化することなく、最も美味しい温度でそのまま楽しめるのです。
また、結露せず、滑りにくい点も大きなメリット。子供からお年寄りまで、使い勝手がとても良いといえるでしょう。さらに、漆には抗菌作用があるため、赤ちゃんや小さい子供も安心して使用することができます。
香川漆器の現代での使われ方とお手入れ方法
香川漆器は食器やカップ、お盆など、日常生活の中で活躍しています。また、ブローチやブレスレットなどのアクセサリーや、スマホスタンドなど時勢に合わせた商品を展開している工房も。ネットショップを開いている工房が増えてきているため、一度ラインナップを覗いてみるのも面白いのではないでしょうか。
香川漆器のお手入れは、非常に簡単。食器類であれば、食器用洗剤をつけた柔らかいスポンジで普段通り洗うだけです。すすいだ後は柔らかい布で水を拭き取ることで、漆の美しさを長く保つことができます。
ただし、電子レンジや食器洗浄乾燥機は使用不可。急激な温度変化や乾燥は、漆が劣化しやすくなるためです。日光に当たると変色する恐れがあるため、直射日光も避けましょう。保管するときは温度や湿度が安定した場所を選びます。
食器類以外で、使用頻度があまり高くないものの場合は、ときどき保管場所から出して空拭きすることをおすすめします。柔らかい布でなでるように優しく拭くことで、美しい艶をいつまでも楽しむことができるでしょう。
香川漆器の見学・体験ができる場所
讃岐漆芸美術館
所在地 | 香川県高松市上福岡町2017-4 |
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電話番号 | 087-802-2010 |
定休日 | お問い合わせください |
営業時間 | お問い合わせください |
HP | https://karokaro.ashita-sanuki.jp/ |
備考 | 漆絵付け・彫漆・金つぎ体験 3,000円~ |
一和堂工芸株式会社
所在地 | 香川県高松市屋島東町1572 |
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電話番号 | 087-841-1531 |
定休日 | 土(不定休)・日・祝 |
営業時間 | 10:00~18:00 |
HP | http://ichiwadou.net/html/ |
備考 | 販売のみ インターネットでの注文は24時間対応 |