喜如嘉の芭蕉布とは
喜如嘉の芭蕉布(きじょかのばしょうふ)とは、沖縄県大宜味村(おおぎみそん)の「喜如嘉」という地域で作られている織物のことをいいます。
喜如嘉の芭蕉布は、材料となる糸芭蕉を育てるための畑作りから始まり、長い長い工程を経て作られていて、国指定の重要無形文化財にもなっています。
喜如嘉の芭蕉布の歴史を辿る
喜如嘉の芭蕉布の歴史は古く、沖縄に琉球王朝が誕生する前、日本が鎌倉時代の頃には既に存在していたと考えられています。
芭蕉布の原料となる糸芭蕉(バナナの仲間)は、山に自生していたほか、各家庭の庭や畑にも植えられていました。
その糸芭蕉から採りだした糸を女性たちが紡ぎ、各家にある機織機で、家族の衣服や、売り物用の芭蕉布を織っているのが戦前までの日常風景でした。
芭蕉布は、軽くて風通しが良いため、高温多湿な亜熱帯気候の沖縄においては、昔から必要不可欠なものだったのです。
琉球王朝誕生後は、絣織の芭蕉布は王族や士族の着物に使われ、無地や縞芭蕉は庶民の普段着として使われていました。
1609年に薩摩藩が侵攻してきて以降は、芭蕉布は人頭税として、日本国への貢物としても重宝されるようになります。
1800年代に入ると、沖縄でも綿花栽培が一般化し、保湿性の高い綿素材の服は冬用、風通しが良い芭蕉布の衣服は夏用として、季節ごとに使い分ける習慣が生まれました。
しかし、第二次世界大戦時の沖縄戦で、原料となる糸芭蕉の畑は焼かれ、芭蕉布の生産量は一気に落ち込んでしまいます。
そんな喜如嘉の芭蕉布の危機を救ったのが、後々人間国宝となる平良敏子さんです。
平良さんは戦後、途絶える寸前にあった喜如嘉の芭蕉布を再興させるため、一緒に芭蕉布を制作してくれる仲間たちと共に、様々な方法で販路を拡大していきます。
ランチョンマットやネクタイなど、当時の生活に合わせたものづくりを行い、着実に人気と認知度を獲得していくという、新しい試みに取り組んでいったのです。
また、平良さんは、喜如嘉の芭蕉布本来の作り方(技)、あるべき姿を追求し、試行錯誤をしながら「喜如嘉の芭蕉布」を至高の工芸品へと高めていきました。
その努力の結果、喜如嘉の芭蕉布は、1972年に国の重要無形文化財として認定され、喜如嘉芭蕉布事業協同組合の設立に繋がっていきます。
そして、1200年代から脈々と紡ぎ継がれてきて、一時期途絶える寸前になっていた喜如嘉の芭蕉布は、今や、沖縄を代表とする織物として、世界中から注目される工芸品となっています。
自然美を追求した喜如嘉の芭蕉布の特徴
1年間に120反程しか生産できないという喜如嘉の芭蕉布作りは、糸芭蕉の畑を作るところから始まります。
糸になる繊維が採れるようになるまでに3年。
そこから、 1本1本伐採し、芋はぎ(ウーハギ)と呼ばれる繊維を採りだすための作業が行われ、繊維の硬さ・太さごとに区別され、全部で20以上の工程を経て芭蕉布が織られていきます。
芭蕉布づくりにおいて、「織り」は全工程の1%程度。そのくらい、芭蕉布は「糸づくり」が重要ということです。
糸芭蕉から採りだされた繊維は、やさしいベージュ色をしていて、ツヤがあります。
この繊維を紡いで作った糸から できている芭蕉布は、薄くてハリがあり、サラッとした肌触りをしているので、暑い夏を涼しく過ごすにはピッタリなおしゃれ着です。
ちなみに、喜如嘉で作られている芭蕉布の文様の特徴で「シンプルな色使い」という点も挙げられるのですが、芭蕉布に絣柄を入れる場合は、天然染料で染めた糸を織り込んでいきます。
この天然染料には、沖縄に自生しているシャリンバイや福木(フクギ)などから採取したものが使われているので、芭蕉布は、沖縄の自然をギュッと詰め込んで作られた、貴重な布ということになります。
また、近年では「絽織(ろおり)」「花織」など、喜如嘉で昔から作られていた織りの芭蕉布も復活し、シンプルで自然な美しさを極めた喜如嘉の芭蕉布本来の姿が、見られるようになっています。
喜如嘉の芭蕉布の現代での使われ方とお手入れ方法
喜如嘉の芭蕉布で作られた着物は、梅雨~夏の高温多湿期のおしゃれ着として活躍します。
手入れ方法の注意点として、芭蕉布は乾燥に弱いため、乾燥剤は使わないでください。
時々陰干しをして、風を通して管理すれば大丈夫です。シワが気になる場合は、水を入れた霧吹きで少し湿らせ、軽くのばして陰干ししておきましょう。
その他、喜如嘉の芭蕉布は生活日用品としても人気があります。
ネクタイやクッション、バッグやポーチなど、現代の生活に馴染みやすいアイテムがたくさん販売されているので、老若男女問わず親しみやすい工芸品となっています。
喜如嘉の芭蕉布の見学・体験ができる場所
大宜味村立芭蕉布会館
所在地 | 沖縄県国頭郡国頭郡大宜味村喜如嘉454 |
---|---|
電話番号 | 0980-44-3033 |
定休日 | 日曜日、旧盆、年末年始(12月29日から1月3日まで) |
営業時間 | 10:00~17:00 |
HP | ttp://www.vill.ogimi.okinawa.jp/village_bashofu/ |
備考 | 1階は芭蕉布製品の展示や販売コーナー、2階は芭蕉布伝統工芸従事者たちによる芭蕉布の制作が行われていて、制作している様子を見学することができます。 |
染織工房 バナナネシア
所在地 | 沖縄県今帰仁村字謝名697-3 |
---|---|
電話番号 | 0980-56-3020 |
定休日 | なし |
営業時間 | 9:00~17:30 |
HP | http://banananesia.official.jp/index.html |
備考 | 芭蕉布、芭蕉紙、紅型の制作を行っている工房です。【体験メニュー】紅型体験 2,500円(税込み) |