京扇子とは
京扇子とは、京都府で作られている扇子です。扇子の発祥地は日本であり、京都はその中心にありました。
製造工程ごとに専門の職人が担当し、繊細でデザイン性が高い京扇子。国内だけでなく、海外での人気も高く、土産物として購入する観光客が非常に多いです。
京扇子の歴史と平安のメモ帳
京扇子のはじまりは、平安時代初期にまでさかのぼります。
824~833年に建立された御影堂(みえどう)では、寺僧と平家の玉織姫が「阿古女扇(あこめおうぎ)」と呼ばれる扇子を作りました。阿古女扇は正装した女性が持つ扇子として使用され、のちの京扇子の原型となったといわれています。
このとき、扇子の基になったのは「木簡」。当時貴重だった紙の代わりに、字を書き記していた木の札です。木簡にはさまざまな記録が記され、「桧扇(ひおうぎ)」として記録帳の役割を果たすものも。その後、扇面には字だけでなく、徐々に絵柄も彩られるようになりました。
また、竹や木で扇子の骨組みである扇骨(せんこつ)を作り、片面に紙を張った紙扇も誕生します。扇を広げた様子が羽を広げた蝙蝠(こうもり)に似ていることから、蝙蝠扇(かはほりおうぎ)と呼ばれるようになりました。
平安後期に入ると、扇骨の細工がより繊細に。扇骨に透かし彫りで細工した「皆彫骨(みなえりぼね)」や「切透扇(きりすかしおうぎ)」などが生み出されます。
実は、現代でよく見かける両面に紙が張られるような扇子は、中国からの逆輸入によるものです。鎌倉時代に輸出された日本の扇が改良され、室町時代に「唐扇」として返ってきたことから、日本でも一般的な扇子として定着しました。
そうして、京扇子は京都でさまざまな形のものが作り続けられ、1977年には国の伝統的工芸品へ指定されるまでになったのです。
職人のリレーで仕上げる京扇子の特徴
京扇子の特徴は、優雅で上品な美しさにあるといえるでしょう。その美しさは、熟練された職人の技術と、上質な原材料が掛け合わさって出来上がります。
一見すると、ほかの扇子との違いが分かりにくい京扇子。しかし、実は扇骨の数がほかの扇子よりも多く、扇面の折幅が狭くなっています。そのため、開閉するときは非常になめらかで、閉じたときにも「ピシッ」と美しく収まります。
原材料には、京都丹波地域の真竹を使用。竹は蒸してから、槌(つち)や割小刀(わりこがたな)で割り、扇骨を作っていきます。このような製造工程は87個にも分けられており、それぞれ専門の職人が受け持つことになっています。
分業制を取ることで、より丈夫でより繊細な京扇子を仕上げていくことができるのです。
京扇子の現代での使われ方とお手入れ方法
京扇子には、いくつか種類があります。一般的に利用されているのが、夏扇とされる「蝙蝠扇」。主に暑い時期にあおぐ使い方をするため、涼しげなデザインであることが多いです。
また、夏扇には小さめサイズの女性用と、大きめサイズの男性用があります。夏扇に刺繍が施された刺繍扇も、普段使いとして利用しやすいでしょう。なお、刺繍扇は絹製で繊細な技法が駆使されているため、贈り物としても最適です。
刺繍を施していない京扇子は、単に「絹扇」と呼ばれます。絹を用いた手法は、ヨーロッパからの逆輸入です。洋装にも合わせやすく、布の丈夫さや絹の高級感も人気の理由となっています。
慶事に活用される京扇子は、「祝儀扇」。絵柄ごとに利用すべきTPOがあるので、購入時に店員へ確認すると安心です。このほか、お茶席で使う小さめの茶扇や舞踊で使われる優美な舞扇、さらに能楽に使われる豪華絢爛な仕事扇などがあります。
いずれにしても、水気や火気のある場所では使わないように気をつけたいところ。保管する際には購入時に付いていたしめ紙などで固定すると、扇骨の変形を防止できます。長期保管では高温多湿な場所は避け、カビが発生しないように気をつけましょう。
普段のお手入れとしては、仕舞う前に扇骨部分は乾拭きして汚れを落とします。手垢による汚れが気になるようであれば、目の細かなサンドペーパーなどで擦ってみてください。扇面は洋服用のブラシなどの柔らかいブラシで優しく払い、ホコリを落とす程度に止めます。
汚れがひどい場合は、水で濡らし固く絞った布で優しく拭き、しっかりと乾燥させてから仕舞うようにしましょう。
万が一、扇骨が折れてしまった・扇面が外れてきてしまったという場合は、購入元や製造元へ相談してみてください。修理内容によって金額や必要期間は異なりますが、思い出深い京扇子を新品同様に蘇らせることができる場合もあります。
京扇子の見学・体験ができる場所
京都伝統産業ミュージアム
所在地 | 京都府京都市左京区岡崎成勝寺町9-1 京都市勧業館みやこめっせ 地下1階 |
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電話番号 | 075-762-2670 |
定休日 | ホームページの休館カレンダーをご確認ください |
営業時間 | 9:00~17:00(入館は16:30まで) |
HP | https://kmtc.jp// |
備考 | 見学無料(企画展は有料) ショップ購入あり |
舞扇堂 祇園店(きよみず店・錦市場店もあり)
所在地 | 京都府京都市東山区祇園町南側579 |
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電話番号 | 075-532-2002 |
定休日 | 不定休(お問い合わせください) |
営業時間 | 11:00~19:00 |
HP | https://www.maisendo.co.jp/ |
備考 | 扇子絵付け体験2,200円~ 刻印名入れ500円(税別) |