宮古上布とは
宮古上布とは、日本三大上布の1つであり、沖縄県宮古島で作られている織物のことです。
苧麻(ちょま)という麻の繊維で作った糸で織られる麻織物を、琉球藍で染めて作ります。とても細い糸で織られる精緻な絣模様と、光沢のある滑らかな風合いが特徴です。
一人の男から始まった宮古上布の歴史
400年程前のこと、琉球から明へ向かう貢物を乗せた船が、台風で沈没しそうになっていました。そこへ宮古島で暮らす男が現れ、荒れ狂う海へ飛び込むと船を修理し、乗組員の命を救ったのです。
琉球王国はその男の功績を称え、間切頭主に。男の妻がたいそう喜び朝の織物を献上しました。それが宮古上布の始まりだと言われています。その後約20年以上もの間、宮古上布は琉球王国へ献上され続けたそうです。
ただ、宮古地方では、500年以上前、15世紀頃からすでに苧麻を使った織物が作られていたと考えられています。宮古上布の歴史は、琉球王国に献上されるよりもっと前に始まっていたのです。
1609年に琉球が薩摩の支配下になり、1637年には人頭税が課せられるようになります。女性には、宮古上布を納付することが義務付けられました。それほど、宮古上布には価値があったのです。
琉球王府では、各村ごとに村番所を設置。公の宮古上布の工房としてブンミャーという施設を設けます。ちなみに、ブンミャーとは宮古島の方言で、ブー(糸)・ンミ(績ぐ)・ヤー(屋・建物)という意味です。その村から手先の器用な女性を5~6名選び出し、琉球王国への貢ぎ物にする上布を織ったと言われています。
この時代、宮古上布は麻織物の最高級品として薩摩上布と呼ばれ、広く知られるようになります。本来であれば宮古島特有のものであったにも関わらず、政治的な面で薩摩という名前が付けられていたということです。
その後人頭税が廃止されると共に、品質の劣化を防ぐため、織物組合を発足。大正~昭和初期にかけて生産量の最盛期を迎えたものの、太平洋戦争後、沖縄がアメリカの支配下に置かれたことをきっかけに衰退します。技術や文化が途絶えかけている状態だったため、現在は伝統を受け継ぐための製織技術や織り技術、絣締めや、染め習得のための研修をしたり、歴史の座学等を取り入れて、伝統を担う者としての幅広い知識を得るため後継者の育成に力を入れています。
繊細な絣模様と光沢が特徴の宮古上布
宮古上布の最大の特徴と言えば、繊細な絣模様です。絣は、かすり、と読みます。
沖縄地方で古くから自生し、年5回ほど収穫可能である植物、苧麻(ちょま)。宮古上布は、この苧麻の茎の表皮から取れる繊維を、1本1本手で裂いて作った極細の糸で作られる織物です。
苧麻から取れた糸は、括染め(くくりぞめ)という技法を使い、何度も琉球藍を染め重ねます。その糸を1000本以上使い、3カ月以上かけて布を織りあげるのです。自然に生み出される植物を使うので、当時は安定して生産できたわけではありません。さらに手間暇かかって作られるものだったのです。
宮古上布は、幾重にも重なった琉球藍の濃い紺色の中に、白で浮かび上がる「十」の形や花柄が美しく、希少価値の高い反物として知られています。生地そのものを染めるのではなく、極細の糸が描き出す模様が、より高く評価されてきました。もちろん、現代においても、中々そこまで緻密に作られた反物はないでしょう。
さらに、宮古上布は、ロウを塗ったように光沢があるのも大きな特徴です。宮古上布には、砧打ち(きぬたうち)と呼ばれる、布を木製のハンマーで叩いて仕上げる工程があります。端から端まで、どこまでも、最後の最後まで手を抜くことはありません。砧打ちは時間をかけて、とにかく隅々までまんべんなく行われます。この工程によってツヤ感のある布が生み出されるのです。
さらに、宮古上布は苧麻の細く薄い糸のおかげで、程よく軽い透け感もあります。濃い色合いでも涼やかに見えるのは、繊細な柄や透け感のおかげでもあるでしょう。
生地が薄い故、どうしてもシワになりやすいというデメリットはありますが、通気性に優れ、水にも強く吸水性が高いので、汗をかくような季節や暖かい場所では特に着心地良く感じられるものです。やはり沖縄という温暖な土地で生まれた織物だからこその特徴であると考えられます。古い時代にはクーラーなどなかったですから、着るもで少しでも涼を取ろうと作り出されたものだったと言っても過言ではありません。
宮古上布の着用後にしておきたいお手入れ方法
宮古上布は、数はそれほど多くありませんが、現代でも着物として使用されています。優れた通気性や吸水性から、夏物であることがほとんどです。お手入れをする前には、和装ハンガー、霧吹き、新聞紙や汚れても良い布を用意しておきましょう。
着用後はシワを取るために、風通しがよく、直射日光の当たらない場所で和装用ハンガーにかけます。
着物の折り目になる部分以外に霧吹きで水をかけてください。後は布自身の重みでシワが伸びていきます。自然乾燥させ、完全に乾いたら折り目に沿ってたたみ、お手入れは完了です。
また、汚れが付いてしまった場合や、その年最後の着用後は、丸洗いすることをおすすめします。クリーニング店などを利用するものいいですし、知識がある方なら自分で洗うことも可能です。
自分で洗う場合は、和装用ハンガーとできるだけ柔らかいタオル、弱アルカリ性の洗濯洗剤、新聞紙や汚れても良い布、スチーム付のアイロンを用意します。
浴槽に30度以上、冷たいと感じるくらいの水をたくさんためて下さい。洗剤を薄めたら、繊細な生地を傷めないためにも、強くこすらないよう気を付けながら押し洗いします。
洗い終わったら、柔らかいタオルで水分を摂り、新聞などを敷いた上に、和装用ハンガーにかけて干しましょう。直射日光はNG、風通しが良い場所を選びます。もしシワが気になるなら、スチームアイロンをかけてお手入れ完了です。
宮古上布の見学・体験ができる場所
宮古織物事業協同組合
所在地 | 宮古島市平良字東仲宗根1166 |
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電話番号 | 0980-73-4111 |
定休日 | 火曜日 |
営業時間 | 10:00~18:00 |
HP | http://miyako-joufu.com/index.html |
備考 | 織物体験や苧麻の糸を使ったストラップ作り、ハンカチやスカーフの藍染め体験ができます。 |
宮古島市体験工芸村 織物&染物工房
所在地 | 沖縄県宮古島市平良東仲宗根添1166−286 |
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電話番号 | 090-7165-9862 |
定休日 | 水曜日 |
営業時間 | 10:00~18:00 |
HP | https://miyakotaiken.com/ |
備考 | 苧麻糸のストラップ作り 60分 2,200円、マット織 90分 2,200円、ハンカチ・ストール・Tシャツの藍染め体験 60分 2,200円~ |