七尾仏壇とは
七尾仏壇とは、石川県能登半島に位置する七尾市で生産されている金仏壇です。
当時の七尾市は、山道が多い土地柄だったということもあり、七尾仏壇は運搬時に仏壇が破損してしまわないよう、耐久性の高い、頑丈な構造で作られています。
堅牢なつくりと、金箔や青貝をふんだんに使用して装飾された七尾仏壇は、1978年に国の伝統的工芸品に指定されました。
室町時代から続く七尾仏壇の歴史
七尾仏壇の歴史は古く、室町時代の初頭には存在していたといわれています。
1409年、当時能登の守護職として七尾に入った畠山満慶(はたけやまみつのり)は、蒔絵や彫刻、家具などの工芸産業を保護して、今日まで続く七尾仏壇作りの基礎を築きました。
そして、1581年に前田利家が七尾城へ入城すると、宮大工や指物職人など、さらに多くの職人が地方から集められて、城や城下町の整備が行われていくことになります。
利家は、港に近い丘陵地に新たな城を築城し、城下町には主要道路を通して街区割りを整備するなど、最先端のまちづくりをしていきました。
また、城下町の周囲には、多くの寺院も配置されていきました。これらの寺院は、有事の際に野戦陣地として活用するために作られたともいわれています。
こうして、大幅な区画整備が行われたあとの1616年の七尾地図には、塗師町(ぬしまち)、木町、大工町などの名前が記載されていることから、七尾市には仏壇作りと関係のある多くの職人たちが住んでいたことが推測できます。
七尾地域では仏壇店のことを「ぬしや」と呼ぶ風習があるので、この時代にはすでに仏壇づくり産業が根付いていたのであろうと考えられています。
ちなみに、現在「七尾仏壇協同組合」として活動している組織の前身は、現存する仏壇業者最古の書類(1904年の帳簿)に記録されている「七尾町塗師業仲間」です。
1600年代から現在まで、仏壇作りの技術は脈々と受け継がれてきたというわけです。
では、なぜ、七尾市では仏壇作りが定着していったのでしょうか。
主な理由としては、以下の点が考えられます。
・七尾市がある能登地方には、仏壇の材料となるヒバやアテなどが豊富に自生していた。
・湿度や気温などが漆塗りに適していた
・昔から祭りが盛んな地域で、神輿を作る技術があったため、仏壇作りの技術も難なく取り入れることができた
・北陸地方は浄土真宗を信仰する人が多く、仏壇を必要とする家が多かった
北陸地方では、1471年以降、浄土真宗本願寺派第8世宗主の蓮如上人によって、幅広く布教活動が行われていました。そのため、仏壇の需要はほかの地域よりも高かったといわれています。
さらに、江戸時代に入ると、幕府の寺請制度により、民衆は檀家となることを義務付けられたため、仏壇の需要はさらに高まっていきました。
これらの点から、七尾仏壇づくりは地場産業として確立し、発展していったとされています。
荘厳・重厚な七尾仏壇の特徴
七尾仏壇の特徴を表す言葉は「堅牢」「荘厳」「豪華」です。
先に記述しているように、七尾地域は山道が多く、仏壇の運搬は過酷なものでした。そのため、運搬の途中で壊れたりしないような、丈夫な構造の仏壇が必要だったのです。
仏壇の骨組みとなる木地作りでは、木を削って嵌合部分を作り、組み立てる「ほぞ組み」という技法が用いられています。
釘を1本も使わないほぞ組みには、頑丈で耐久性が高く、修繕する際は分解しやすいという特徴があります。
また、木地作りではさらに強度を出すため、本尊、脇仏の後板である鏡板(かがみいた)を二重にする「二重鏡板」という、独自の技法を取り入れている点も特徴的です。
そして、「引き壇縁」と呼ばれる、手前に引き出せる台を備えているのも、七尾仏壇ならではです。
さらに、従来は仏具に分類される三卓を、仏壇の付属品として作る点も、七尾仏壇作りの特徴です。
ほかにも、荘厳な二重破風の宮殿(くうでん)や、金箔や青貝を多用した立体感のある蒔絵、輪島塗の流れをくんだ漆塗り技法など、七尾仏壇には優れた技法が随所に取り入れられています。
七尾仏壇の現代での使われ方とお手入れ方法
頑丈で大きなサイズの製品が多い七尾仏壇ですが、近年は仏間のない家や、マンションなどで仏壇を置けない家も増えていることもあり、小さなサイズの仏壇作りにも取り組んでいます。
例えば、A4サイズで、屏風のように折りたたんで収納できるミニ仏壇。
これは、七尾仏壇協同組合が、仏壇需要の低迷に対する打開策として考えたもので、「仏庫(ぶっこ)」シリーズの製品のひとつです。
屏風のように広げて使うミニ仏壇は、四角柱を3つ連ねた構造になっていて、それぞれに位牌や仏像などが置けるようになっています。
従来の七尾仏壇とは全く異なるデザインですが、釘を1本も使わないほぞ組による組み立て、内側に金箔を使用するなど、伝統技法を取り入れて作られています。
七尾仏壇の見学・体験ができる場所
いしかわ生活工芸ミュージアム
所在地 | 石川県金沢市兼六町1番1号 |
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電話番号 | 076-262-2020 |
定休日 | 4月~11月は、毎月第3木曜日 12月~3月は、毎月木曜日及び年末・年始(祝日の木曜は除く) |
営業時間 | 9:00~17:00(入館は16:45まで) |
HP | http://www.ishikawa-densankan.jp/ |
備考 | 七尾仏壇をはじめ、36業種の石川県を代表する伝統工芸品が展示されている。 |
(有)髙沢佛壇店
所在地 | 石川県七尾市藤橋町申37-1(小丸山大通り) |
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電話番号 | 0767-53-2737 |
定休日 | 年末年始 |
営業時間 | 9:00~18:00 |
HP | http://e-takazawa.jp/ |
備考 | 七尾仏壇の製造・販売を行っている仏壇店。 |