浪華本染めとは
浪華本染め(なにわほんぞめ)とは、大阪府堺市や柏原市を主な生産地とする染色法のことです。一般的に「注染(ちゅうせん)」と呼ばれています。
模様手ぬぐいを量産するために開発された浪華本染め。表裏両面から染めるため、糸の一本一本からしっかり染まります。
繊細な模様や発色が特徴で、とくに浪華本染めで染められた浴衣が評判です。現在は手ぬぐいや浴衣のほかに、アロハシャツやコースターなども作られています。
2019年には国の伝統的工芸品に指定されました。
川沿いで発展した浪華本染めの歴史
江戸時代の初めごろ、浪華本染めの材料である「和晒し(わざらし)」の産業が大阪の石津川沿いの津久野・毛穴(けな)地域で始まりました。和晒しとは、簡単にいうと染色の前処理をする工程のことです。
この地域は和晒しに必要なきれいな水や、日光に晒すための土地がじゅうぶんにあり、綿織物の流通の通り道でもあったため、和晒しが盛んとなったと考えられています。
現在おこなわれている浪華本染めの起源は明治時代の1887年ごろになります。模様手ぬぐいを大量生産するための技術として浪華本染め(注染)が大阪で開発されました。
当初は主に手ぬぐいの染色をおこなっていましたが、徐々に浴衣の染色も増加。
大正初期には、大阪府の平野川や長瀬川の川筋に染色工場が多く立ち並ぶようになります。なぜなら染色にはきれいな水が必要だったのと、川筋だと井戸水を汲み上げやすかったからです。
壺人(つぼんど)とも呼ばれる浪華本染めの職人たちは創意工夫を重ね、同時に2色以上を染める「差し分け」や色の濃淡を表現する「ぼかし」という手法を考案。これによって微妙な風合いや色合いを表現しました。
糸自体を染めていく手法のため、和晒しのもつやわらかい質感や通気性の良さが損なわれることなく色がつけられます。このため浪華本染めは手ぬぐいや浴衣によく合う染色法だったのです。
戦後まもなく、大阪発祥の注染と伝統的な生地や染色の職人たちの組合として「協同組合オリセン」が誕生。伝統的な技術を職人同士で守りながら、和晒しの生地を浪華本染めで染め上げた手ぬぐいや浴衣を販売し始めました。
発色が良く、模様も美しい浪華本染めは、1985年の7月26日に浴衣が、2016年10月31日に手ぬぐいが大阪府知事の指定伝統工芸品となります。
その3年後、2019年には国の伝統的工芸品に指定されました。
浪華本染めは浴衣にぴったり
浪華本染めを語るうえで重要なキーワードは「和晒し」と「注染」です。
天然の木綿は脂質や不純物を含んでいますので、このままではきれいに染色ができません。そこでおこなわれるのが「和晒し」です。
木綿を釜で煮て乾燥させることで不純物を取り除き、染めやすい真っ白の木綿を作ります。時間をかけてゆっくり煮ていくので、やわらかな風合いと肌ざわりが特徴の布に仕上がります。
一方、現在の服に使われているのはほとんどが「洋晒し」です。洋晒しは釜で煮るのではなく、生地をローラーではさんで薬品に通していきます。見た目はピシッとしていてきれいですが、少しかための印象になります。
洋晒しと違って、やわらかく吸水性のある和晒しは日本特有の文化なのです。
この和晒しによってできあがった布を染めるのが「注染」という技法です。染色したい場所に土手を作って、そのなかに染料を注ぎ込んで色をつけていきます。「注」いで「染」めるということで「注染」と名がつきました。
手作業ならではの細かい柄や色合いの違いを表現でき、奥行きのある仕上がりが特徴です。ぼかしや差し分けなどの技法を使えば、立体的な図柄も表現できます。
浪華本染めの特徴としてあげられるのは、色あせしにくいという点です。表と裏を同時に染めているため、使い込んでも色あせしにくく、通気性も優れています。
そんな浪華本染めは夏に着る浴衣にぴったりの染色法なのです。
浪華本染めの現代での使われ方とお手入れ方法
浪華本染めは現在、浴衣や手ぬぐい、日傘、マスクなどが制作・販売されています。肌ざわりが良く、通気性に優れた浪華本染めは夏にぴったりです。
きれいな発色の浴衣はとくに人気で、さまざまな柄や色の浴衣が販売されています。
浪華本染めは綿織物や綿麻織物を使っているため、基本的に自宅での洗濯が可能です。洗濯機で洗う場合は洗濯ネットを利用すると安心です。
もちろん浴衣も自宅で洗うことができます。洗ったあとは着物ハンガーや物干し竿に通して日陰で干しましょう。
浪華本染めは色あせもしにくいので、きちんとお手入れをすれば、きれいな浴衣が長く楽しめます。
浪華本染めの見学・体験ができる場所
株式会社協和染工場
所在地 | 大阪府堺市中区毛穴町335-2 |
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電話番号 | 072-271-0015 |
定休日 | 土・日曜日、祝休日 |
営業時間 | 記載なし |
HP | https://www.pref.osaka.lg.jp/mono/seizo/kobo-03.html |
備考 | 注染による浪華本染めの工程を見学(要予約)したり、制作物を購入できたりします。 |
協同組合オリセン
所在地 | 大阪市中央区久太郎町1-8-15 浪華ビル1階 |
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電話番号 | 06-6261-0468 |
定休日 | 土・日・祝祭日 |
営業時間 | 10:00〜15:00 |
HP | https://www.osaka-orisen.com/index.html |
備考 | 浪華本染めの浴衣を購入することができます。 |