大阪唐木指物とは
大阪唐木指物(おおさかからきさしもの)とは、唐木と呼ばれる東南アジア原産の木材を材料に、指物という技法で作られている木工工芸品です。
指物とは釘やねじを使わず、木材を組み合わせて接合する技法です。指物という名前の由来は、板を指し合わせて作るからとも、物差しを使うからだともいわれています。
指物にはいくつかの流派があり、大阪唐木指物は江戸指物、京指物と並んで、代表的な流派の一つです。大阪唐木指物は大阪府を中心に、兵庫県や奈良県、和歌山県などで生産されています。
大阪唐木指物は遣唐使が持ち帰り、天下の台所で花開いた
唐木を使った製品が日本に持ち込まれたのは奈良時代のこと。遣唐使によって、日本にはない珍しい木材を使った工芸品が持ち帰られました。一部は現在も正倉院に残されています。
用いられている木材は実際には東南アジア産のものですが、中国(当時の唐)から伝わったため、唐の木という意味で「唐木」の名がつきました。指物の技術が日本に伝わったのも、同じく奈良時代だといわれています。
当初はまだ航海技術が未熟だったために日本に入ってくる唐木の量はあまり多くありませんでしたが、時代を経るにつれて輸入量が増加していきます。唐木指物の技法が確立したのは1400〜1500年頃とされています。
安土桃山時代に入ると茶道や華道の発展に伴って、唐木が使われる機会が増えました。また、持ち運びできる什器のニーズが高まったことから指物を手掛ける大工も増え、指物を専門とする指物師が登場してきます。
江戸時代に入ると「天下の台所」と表現されるように、大阪が商業の中心地となり、全国の物資が集まるようになりました。また当時の日本は鎖国政策を行っており、一部の国と行っていた貿易も長崎のみに限られていました。
そのため唐木もいったんすべて長崎に入ってきた後、大阪に運ばれるようになります。大阪の薬種問屋が唐木の販売も行っていたため、指物を作る職人も増えて大阪の工芸品として定着しました。
この背景には、町人が豊かになったことも挙げられます。以前は指物といえば寺院や公家の用いる家具といった、上流階級のものでした。武家政治が行われるようになって茶道関連の品が作られるようになっても、一般民衆には縁がありませんでした。
しかし江戸時代に入って町人文化が発展するにつれ、指物は一般にも普及していきます。上流階級の好む雅やかで繊細なものから、木目を生かすという町人に好まれるもの、日常で使われるものへと変化。現在まで続く形式が確立されました。
今も伝統の技や工法を守りながら手作業で作られている大阪唐木指物。その一方、現代の生活様式に合わせる工夫も行われており、伝統的な棚類や机類以外の家具や小物も生産されています。1977年に経済産業大臣指定の「伝統的工芸品」として認定を受けました。
鏡のような艶と落ちついた色味を持つ大阪唐木指物の特徴
大阪唐木指物の特徴は、どっしりとした落ち着きのある色合いと、まるで鏡のような艶があることです。木目を活かして、摺り拭き(すりぶき)漆仕上げと呼ばれる技法で仕上げられます。
摺り拭き漆仕上げとは、天然精製の生漆(きうるし)を摺り込んで拭き取る作業を繰り返す技法です。一般的な漆塗りとは異なり、擦り込んで拭き取る作業を繰り返すことで、木目が見える自然な美しさと鏡のような光沢をあわせ持つ仕上がりになります。木目は木によって違うため、1点ごとに異なる表情を見せてくれます。
唐木指物という名前が示すように、素材に唐木と呼ばれる木材を使っていることも特徴です。唐木とは紫檀(したん)、黒檀(こくたん)、花梨(かりん)、鉄刀木(たがやさん)といった東南アジア原産の木です。非常に堅く、釘やねじが入りません。そのため、指物というほぞをほぞ穴に差し込んで組み合わせる技法で接合されています。
大阪唐木指物の現代での使われ方とお手入れ方法
大阪唐木指物は素材に用いられている木材が堅く、釘やねじを使わずに接合する工法のため丈夫です。また、使い込むほど艶も出て味わい深くなります。お手入れ次第で一生ものですし、さらに自分の子どもへ、そして孫へと何世代にもわたって愛用することも可能です。
普段のお手入れは、傷をつけないよう柔らかい布でから拭きを。汚れが落ちない場合は水のあとが残らないよう、固く絞った布で水拭きした後にから拭きします。漆がはげる原因になるので、化学ぞうきんやクレンザーは使用しないでください。
色が変わったり木地が狂ったりするのを防ぐため、直射日光やストーブ、エアコンの熱が当たらないように気をつけましょう。鍋など熱いものを直接置くのも避けてください。
傷や変色が気になってきた、壊れてしまったという場合は職人さんのいる工房や家具店に修理を依頼するという方法もあります。ばらして組み直したり、漆を入れ直したりしてもらえれば、引き続き使うことが可能です。
引っ越して部屋のサイズに合わなくなってしまった、親から譲り受けたけれど我が家には合わないという場合もあるでしょう。そんな場合にはリメイクしてくれるところもあるので、手放すのではなく形を変えて使い続けるという選択肢もあります。
大阪唐木指物の見学・体験ができる場所
大阪市立クラフトパーク
所在地 | 大阪府大阪市平野区長吉六反1-8-44 |
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電話番号 | 06-4302-9210 |
定休日 | 火曜日・年末年始(12月28日~1月4日) |
営業時間 | 9:30~17:00 |
HP | https://www.craftpark.net/ |
備考 | 大阪唐木指物の展示があるほか、工房ではほぞ組みを学べる講座があります。 |
ギャラリー藤田
所在地 | 大阪府大阪市中央区心斎橋筋2-1-8藤田ビル3階 |
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電話番号 | 06-6211-3512 |
定休日 | 土日祝 |
営業時間 | 9:00~17:00 |
HP | http://www.fujita-gallery.co.jp/index.html |
備考 | 大阪唐木指物の家具販売店。修理の依頼も可能です。 |