琉球びんがたとは
琉球びんがた(りゅうきゅうびんがた)とは、沖縄県の首里市周辺で作られている染織品です。その伝統的な製法を長年守り続けてきたことにより、1984年に経済産業大臣より、伝統的工芸品の指定を受けています。
王国を鮮やかに彩った琉球びんがたの歴史
琉球びんがたの発祥は、琉球王国が成立した直後の1450年頃に遡ります。「李朝実録」という李氏朝鮮時代の正史をまとめた書物の中に、びんがたと思われる染物の記述があり、この頃にびんがたの技法が誕生したといわれています。
東南アジアとの交易の中でさまざまな技法を取り入れた過程で、琉球王国を象徴する独特の雰囲気の染物として交易品のひとつになりました。
主に琉球の王族や士族の衣装に使われており、首里城の周りに染屋を置き手厚く庇護するなどして、格式ある王朝文化としてその技術が受け継がれていったといわれています。
しかし明治時代の王府廃止や第二次世界大戦の戦火により、一時はその文化の存続が危ぶまれます。その後は沖縄の文化に精通した染織家である鎌倉芳太郎や、彼を始めとする有識者たちの手によりびんがたは復興に至ります。
その努力の甲斐あってか、現在では京友禅や加賀友禅と並ぶ、日本を代表する染色技術となりました。華やかな歴史に彩られた琉球びんがたも、多くの伝統的工芸品と同様、後継者の育成という課題に直面しています。
そんな中、琉球びんがた事業協同組合では、琉球びんがた後継者育成事業として、工房での体験型研修を毎年行っています。
このように、琉球びんがたを絶やすまいとする多くの人々の手によって、琉球びんがたは今日までその技術を引き継いでいるのです。
大胆かつ華やかな琉球びんがたの特徴
琉球びんがたとは「紅型」と書き、「紅」は色を、「型」は模様のことを指します。その色、模様ともに大胆で華やかな雰囲気を持つ点が琉球びんがたの特徴です。
下地は約20色あったとされ、特に明るい黄色は王族を象徴する高貴な色として、婦人の礼装や神事の際に着用する古式の服装に使われました。
下地はほとんどがフクギなどの天然染料を使用しており、染められた下地の上から顔料と染料を適宜重ねて着色していきました。
着色も赤や緑といったはっきりとした色が好んで使われています。模様は中国の吉祥文様を図案とするものが主で、鶴や鳳凰といった縁起物を大きくあしらった染物が王族に好まれました。
また、春の花や秋の紅葉、冬の梅といった自然の風景を季節感問わず同時に存在させた大胆な模様の染物も存在します。
そんな琉球びんがたですが、これを作るにあたっては、多くの工程が必要になります。琉球びんがた作りは、まず型紙に模様を描いていく「型彫り(カタフイ)」から。
豆腐を乾燥させた「ルクジュー」と呼ばれるものを下に敷いて、「小刀(シーグ)」を使って掘り進めていきます。
型紙には、地の部分を彫り落として模様をつける白地型(しろじがた)と、逆に模様の部分を彫り落とす染地型(そめじがた)の2種類があります。
次は、型紙の彫られた部分を布に写し取っていく「型付け(カタチキ)」の工程。布の上に型紙を置き、その上から防染糊(ぼうせんのり。染料が染みないように付ける糊)を塗っていきます。
次は、防染糊を塗り終わった布に顔料を差していく「色差し(イルジヤシ)」の工程。豆乳と糊を混ぜた「豆汁(ごじる)」をハケで塗り、その上から防染糊の入っていない部分に顔料を差していきます。
色を差す順番には決まりがあり、朱色などの暖色系から、青などの寒色系の色を差していくのです。この顔料は定着しにくいため、再度ハケで色を刷り込んでいきます。
色を定着させたら、次は文様の部分にぼかし染を施す「隈取り(クマドウイ)」の工程。隈取りをすることで、模様に立体感や遠近感、透明感が出てくるのです。
次は、布の地色を染める前に、模様に防染糊を付けて色が混ざるのを防ぐ「糊伏せ」の工程。糊の調合を間違えたり、模様から糊がはみ出したりするとキレイに仕上がらないため、かなりの慎重さと熟練の技術を要する工程です。
次は「地染め」の工程ですが、琉球びんがたの地染めの方法は、ハケを使って手で染料を引いていく方法です。顔料を定着させるための糊をハケで引いた後、大きなハケを使って染料を引いていきます。
地染めが終わったら、染料を定着させるため、高温の蒸し器で40分~1時間ほど蒸します。蒸し終わったら、たっぷりの水で防染糊や余分な染料を洗い落とし、乾燥させれば琉球びんがたの完成です。
このように、琉球びんがたを1反作るだけでも、膨大な手作業による多くの工程が必要となります。一つ一つの作業を丁寧に行うことでこそ、琉球びんがたの色鮮やかな色彩や、美しい模様が生まれるのです。
琉球びんがたの現代での使われ方とお手入れ方法
琉球王国時代は王族の礼装に使われていた琉球びんがたですが、今でも着物や帯にその技法が引き継がれています。
鮮やかな色彩が美しい琉球びんがたの着物は、成人式や結婚式のような特別なシーンにぴったり。さらに、近年はお土産にも手に取りやすいよう、琉球びんがたを使ったさまざまな雑貨が作られています。
たとえば、琉球びんがたのTシャツは、普段着にも使いやすいおしゃれなデザインが特徴。ほかにも、スカーフ、ブックカバーといった小物や、タペストリーのようなインテリアにも、琉球びんがたは使われています。
そんな琉球びんがたですが、美しい色彩を長い間楽しむためには、適切なお手入れの方法を知っておく必要があります。
まず、摩擦による色落ちが起こる危険があるので、強くこすることは避けましょう。汚れてしまったら、Tシャツなど薄手の布製品なら手洗いが可能です。
洗剤を溶かした洗面器に押し付けるようにして洗い、やさしくすすぎます。使用する洗剤は、おしゃれ着洗い用の洗濯洗剤や中性洗剤などがおすすめです。漂白成分や蛍光剤の入った洗剤は色落ち、変色の原因になるため、使用を避けてください。
洗濯機で洗うこともできますが、その際はネットに入れてドライマーク用のコースを選びましょう。もみ洗いや脱水機での脱水は色落ちの原因になるため、避けてください。
着物や帯などのお手入れは難しいので、着物専門のクリーニングのお店にお願いするのがもっとも安全です。しかし、安易に染み抜きをして染料が落ちてしまう可能性もあるので、できれば琉球びんがたを取り扱っているお店に持ち込みましょう。
琉球びんがたの見学・体験ができる場所
那覇市伝統工芸館
所在地 | 沖縄県那覇市牧志3-2-10 てんぶす那覇2F |
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電話番号 | 098-868-7866 |
定休日 | 水曜日、12月29日~1月3日 |
営業時間 | 9:30~17:30(最終入館は17:15まで) |
HP | https://kogeikan.jp/ |
備考 | 琉球びんがたの見学、体験ができます。 |
びんがたの染や
所在地 | 沖縄県国頭郡東村高江116 |
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電話番号 | 090-9384-6324 |
定休日 | 祝祭日 |
営業時間 | 9:00~19:00 |
HP | https://bingatasomeya-e758b.firebaseapp.com/index.html |
備考 | 琉球びんがたの体験ができます。 |