仙台箪笥とは
仙台箪笥とは、宮城県仙台市を中心に職人の手仕事によって生産される工芸家具です。
主にケヤキを材料とし、木目を活かした「木地呂塗り」と獅子の文様などの豪華な鉄飾りが美しい仙台箪笥。江戸時代末期から製造されはじめ、元々は刀の鞘や着物などを収納する実用性が重視される箪笥でした。
仙台箪笥は、実用性に加え、現在では磨き上げられてきた芸術性も高く評価されています。2015年には、職人による優れた伝統の技が認められ、経済産業大臣より「伝統的工芸品」に指定されています。
刀の鞘と着物を保管した仙台箪笥の歴史
仙台箪笥の発祥は江戸時代末期。発祥以来、仙台を中心とする宮城県周辺エリアの生活文化として発展を遂げてきました。
江戸時代の仙台藩(伊達藩)では地場産業として親しまれ、武家の一般的な家財として用いられてきた仙台箪笥。当時の衣服である裃(かみしも)や羽織に加え、刀の鞘を保管できる設計の「野郎型」といわれる箪笥が原型です。サイズは幅4尺(約120センチ)、高さ3尺(90センチ)または3尺3寸(100センチ)と定められていました。
その後、技術の発達や時代の生活スタイルに合わせ、仙台箪笥の大きさや仕様は変化してきました。
明治から大正時代にかけて、仙台箪笥は徐々に庶民にも広がり、生産量は明治から大正時代中期にピークに達します。当時は、ヨーロッパへの輸出も行われ、日本の優れた伝統工芸品として海外でも人気を集めました。
戦時中、材料や人材の不足などにより、仙台箪笥の生産は一時停止されました。しかし、戦後は生産が再開され、伝統的な技術は途絶えることなく現代に至っています。また、伝統を大切に守りながら、新たな魅力も打ち出しており、現在でも大変注目されています。
職人の手仕事から生みだされる仙台箪笥の特徴
武家の家財として用いられてきた仙台箪笥。その歴史的背景から、見た目だけでなく実質的にも丈夫で力強さを持つ箪笥であることが特徴です。
仙台箪笥の主な材料はケヤキ。栗や杉が用いられることもあります。材料の木目を活かす「木地呂漆塗り」の技法を用い、鉄を使った豪華な金具で飾った重厚感がある仕上がりになっています。
耐久性が高く、一生ものの家財として嫁入り道具にも用いられてきました。そのため、縁起物をかたどった金具を飾った箪笥も多くあります。
仙台箪笥は「指物(さしもの)」「漆塗り」「金具」、3つの工程に分かれ、各工程をそれぞれ熟練の職人が担います。まさに3つの技の融合から創り出される工芸品といえるでしょう。
指物
材料を選びカットする木取りから組み立てまでを行うのが指物。仙台箪笥のベースを担う工程といえます。
熟練の指物師が、ゆがみのない寸法、引き出しのスムーズな開閉などを微調整しながら家具を組み立てていきます。これらによって、実用性と耐久性の高い家具となり、長い年月が経っても愛用することが可能に。また、仙台箪笥の特徴のひとつでもある、美しい木目の材料選びも指物師によって行われます。
漆塗
指物に工芸的な美しさを与える漆塗。仙台箪笥では、木の木目が透けて見える半透明の「木地呂(きじろ)塗り」の技術を用いています。漆塗りを行う塗師が、木の表面の凹凸を消し、塗っては磨くという根気のいる作業を繰り返し行います。これによって木の表面は漆におおわれて輝き、漆の底にある木目が美しい模様のように際立ちます。
金具
美しい漆の上に、豪華な雰囲気と表情を加える仙台箪笥の飾り金具。金具は主に鉄ですが、真鍮や銅で作られることもあります。文様は龍や唐獅子、牡丹や菊など。職人の手作業によって、一つ一つ命を吹き込むように、鏨(たがね)で打ち出して作られます。
箪笥の大きさによりますが、使用される金具の数は、ひとつの箪笥に100~200個。美しい金具を付けた箪笥は、大変豪華でいきいきとした印象を与えます。
仙台箪笥の利用シーン・使用上の注意点
仙台箪笥は漆塗りでしっかりとした存在感のある箪笥。日本の伝統的な形と美しい木目、龍や牡丹の文様が、和風の家屋によく合います。また、洋風な部屋に仙台箪笥を置くことで、「和モダン」なインテリアになるのでおすすめです。
最近では、現代の生活スタイルやインテリアに合う工夫もされています。新たな仙台箪笥は、テレビボードやスマートなサイズの箪笥、手紙や薬などの身の回りのものを入れる小物ケースもあります。また、色も従来のものに加えて、黒、赤、青などが新たに作られています。
オーダーメイドで部屋に合わせたサイズ、好みの形や金具を製作することも可能。非常に丈夫なため、古い仙台箪笥や金物をリメイクして使用する試みも行われています。
仙台箪笥のお手入れは、汚れを落とす際には基本的に柔らかい布で乾拭きしましょう。濡れ拭きする場合は、後から乾いた布で拭き、水分を残さないことが大切です。
表面が漆による塗装になっているため、消毒用のアルコールなどを使用すると変色してしまいます。市販のクリーナーも傷めるリスクがあるので使用しないほうが無難です。
また、温度差や湿気に弱いので熱湯をこぼさないように注意しましょう。
仙台箪笥の見学・体験ができる場所
仙臺箪笥歴史工芸館
所在地 | 宮城県仙台市青葉区本町2-7-3 本町家具の街 ユノメ家具本店4階 |
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電話番号 | 022-225-8368 |
定休日 | 年中無休 |
営業時間 | 10:00 ~ 18:00 |
HP | http://www.sendai-tansu.com/kougeikan/ |
備考 | 展示、解説 |
秋保工芸の里 仙台箪笥 熊野洞
所在地 | 宮城県仙台市太白区秋保町湯元字上原54-24 |
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電話番号 | 022-398-2661 |
定休日 | 不定休(12月~3月は日曜・第3月曜) |
営業時間 | 8:00~17:00 |
HP | http://sendai-kumanodou.com/index.html |
備考 | 販売、箸の漆塗り体験(要予約) |