瀬戸染付焼とは
瀬戸染付焼(せとそめつけやき)は、愛知県瀬戸市・尾張旭市周辺で作られる陶磁器です。『せともの』という言葉の由来とも言われ、1997年5月に通産大臣(経産省)により国の伝統工芸品に指定されました。
瀬戸染付焼が作られる工程とともに解説します。瀬戸染付焼の素地に使われるのは、陶土の産地としても有名な瀬戸市周辺で採れる柔らかな陶土。木節粘土(きぶしねんど)、蛙目粘土(がいろめねんど)、猿投長石(さるなげちょうせき)などを混ぜたものをろくろや型打ち、手ひねり技法などで形成します。
下絵付け・染付には、『呉須(ごす)』と呼ばれる酸化コバルト顔料を使い、素地または素焼き後の白地に直接行います。焼くと藍色になる呉須の色と白い素地から生まれる、美しいコントラストが魅力です。
瀬戸染付焼の絵付け技法には、細かい線を描く『線書(せんがき)』、濃淡が魅力の『濃み(ダミ)』、輪郭なしで直接描いて行く『つけたて』があり、絵付け後、透明度・光沢性の高いガラス質の釉薬(石灰釉など)をかけて焼成。
瀬戸染付焼に使われる素地・釉薬・焼き方は窯元によって異なるほか、作られるものも食卓用品や茶器、重箱、花器、アクセサリー類などのほか、灯篭やテーブルなどの大型品、室内調度品など幅広いジャンルがあります。
加藤民吉を始めとする先人たちの熱意で生まれた瀬戸染付焼の歴史
瀬戸染付焼の起源は、19世紀(1800~1900)初め頃までさかのぼります。享和年間(1801~1804年)の瀬戸村では染付磁器が開発され、磁器の生産が村に広まってはいたものの、伊万里焼や有田焼に押されて伸び悩んでいました。
そんな時、瀬戸村(現在の瀬戸市)出身の陶工である加藤民吉(かとうたみきち)が、1804年に九州(備前)に渡り、製磁法を学んで瀬戸へ帰り普及させたのが瀬戸染付焼の始まりです。
民吉は釉薬(ゆうやく)の調合法や原土の精製法などを伝え、丸釜を導入します。技術的なことだけでなく、働き方でも分業化をすすめるなどしたため、瀬戸の磁器生産技術はぐんぐん成長しました。
また、陶画工が瀬戸を訪れるさまざまな絵師(えし)から中国風の画法(南画風、南宋風など)を学んだため、繊細かつ実写的な濃淡のある絵柄が文化・文政年間(1804~30)には確率されていたと言われています。
さらに、1873年のウィーン万国博覧会では、瀬戸染付焼への高評価がなされました。写実的に瀬戸の風景や自然を描いた作風は、ヨーロッパの芸術運動アール・ヌーヴォーへの影響を与えたとも言われているのです。
土による陶器しかなかった瀬戸市で磁器の技術革新に尽力した加藤民吉は、瀬戸磁器の創始者『磁祖』と呼ばれ、瀬戸市の窯神神社には民吉の銅像がまつられています。
神事としては、1932年より『せともの祭り』を開催し、陶磁器の廉売市も兼ねて行われます。
瀬戸染付焼の特徴は伝統的な藍色で描く花鳥風月と独自のツヤ!
瀬戸染付焼の特徴で目を引くのは、瀬戸地方特有の柔らかな味わいが魅力の素地を素焼きした表面に直接筆で描かれた細かな模様です。
日本画のような濃淡や華麗な紋様で仕上げられるのはおもに、鳥、花、昆虫、風景などの自然。絵画的な技法で一つ一つ手描きで行うので同じものは二つとありません。
この技法で使われるのが付立筆(つけたてふで)。専用の筆で一気に描くこの方法は『没骨(もっこつ)』と呼ばれ、瀬戸染付焼きの伝統的な技法です。
手間と時間がかかるため、機械化での大量生産やプリント柄に影響を受けた時期もありましたが、ものづくりが見直されている昨今、人気が再燃しています。
瀬戸染付焼の素地は、ほとんど鉄分を含まない土から作られているためにごりが無く、スッキリと透明感あふれる美しい白色を生み出し、呉須の藍色がより良く映えるのです。
また、しっとりとした潤いを感じさせる表面光沢は、工程の最後に窯の内部温度を1250度程度の高温を維持したまま、釉薬を熟成させる『ねらし』と呼ばれる独自の技法によるもの。
透明感があり柔らかな風合いの瀬戸染付焼には不純物が少なく、見た目の美しさはもちろん、耐光性・耐火性にも優れています。薄く丁寧に仕上げられているので、手に取りやすく、使い勝手が良いのも魅力です。
瀬戸染付焼には毎日使えるシンプルモダンなデザインも豊富!
白と藍のコントラストが美しい瀬戸染付焼には、写実的で細やかな自然柄だけでなく、ドットやストライプ、チェック柄、幾何学模様など、シンプルモダンでおしゃれなデザインも増えています。
「伝統工芸品が気になっているけど、現代の住まいやインテリアに合わなそう…」と思う人は若手の瀬戸染付焼陶作家をチェックしてみてください。
とくに、インスタグラムでも注目されている『瀬戸焼眞窯(しんがま)』の四代目陶作家、加藤真雪(かとうまゆき)さんの作品は若い世代からも人気を集めており、シンプルかつ繊細なデザインが魅力です。
食器系アイテムで取り入れるなら、ぐい飲みやマグカップ、ご飯茶碗や豆皿など毎日使えるアイテムに瀬戸染付焼を取り入れてみましょう。
デザイン豊富な蕎麦猪口(そばちょこ)は、プリンカップやおやつ入れとしても使えて便利です。
また、瀬戸染付焼きには清潔感のあるスタイリッシュなブローチやカフスボタンなどのアクセサリー類や灰皿もおすすめ。大切なあの人へのギフトとしても喜ばれます。
ユニークな作品が気になる人には『招き猫』も良いでしょう。瀬戸染付焼製の招き猫は従来のものとは違い、個性的でおしゃれ可愛い雰囲気満載ですので、ラッキーを引き寄せたい人にピッタリです。
さらに、自分だけの瀬戸染付焼作りが体験できる施設もありますので、興味のある人は挑戦してみてはいかがでしょうか。
瀬戸染付焼の見学・体験ができる場所
瀬戸染付工芸館
所在地 | 愛知県瀬戸市西郷町98 |
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電話番号 | 0561-89-6001 |
定休日 | 毎週火曜日,年末年始12/28~1/4 |
営業時間 | 10:00~17:00 |
HP | http://www.seto-cul.jp/sometsuke/ |
備考 | 小皿,ブローチ,箸置きの素地への絵付け,後日焼成しお渡し |
招き猫ミュージアム
所在地 | 愛知県瀬戸市薬師町2番地 |
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電話番号 | 0561-21-0345 |
定休日 | 火曜日,年末年始12/28~1/4 |
営業時間 | 10:00~17:00(受付は15:00まで) |
HP | http://www.luckycat.ne.jp/index.html |
備考 | 体験料金300円~,1ヶ月後引き取りまたは宅配便 |