首里織とは
首里織とは、沖縄県那覇市の北東部、かつて琉球王国の王府として栄えた首里周辺に伝わる織物のことです。
首里織には、紋織(もんおり)や絣織(かすりおり)など、さまざまな種類があります。中でも、色鮮やかな首里花倉織は琉球王国の王族や貴族が着用する最も格式高い織物とされています。
現代では、着物や帯のほか、かりゆしウエアや財布、インテリア用品など幅広い製品に使われています。
代々受け継がれてきた首里織の高い機織り技術力
1429年から約450年間に渡って栄えた琉球王国。1500年ごろには、東南アジアや中国との交流が活発になり、貿易も盛んに行われていきました。その交易での人や物の往来によって、さまざまな織物技術や染物技術が入ってきました。
特に琉球王国の王府が置かれた首里周辺の城下町では、王族や貴族のための高度な織物技術が育ち、色鮮やかで絵柄の美しい首里織が作られました。
首里織のデザインは琉球王国に仕える絵師が考案。そのデザインを元に士族や城下町の女性たちが機(はた)を織り、御用布として王府へ献上されました。
また、首里織は高度な機織り技術を必要とすることから、上流階級や士族の女性たちの重要な教養として、母から娘へと代々受け継がれ、その技術が継承されていきました。
琉球王国の衰退や、戦争によってすべてを失った沖縄県。伝統工芸も衰退の一途をたどりました。
このままでは代々受け継がれてきた伝統の織物技術も消滅してしまうのではないかと危ぶまれました。しかし、工芸や染色技術を学んでいた宮平初子を中心に、数少ない資料から研究を重ねて首里織を復活させました。
1974年には沖縄県無形文化財に指定。1983年には国の伝統的工芸品の指定を受けました。また、伝統工芸の復興に尽力した宮平初子は、1998年に重要無形文化財「首里の織物」の保持者(人間国宝)に認定されました。
その後も宮平初子は、後継者の育成に大いに貢献し、その技術は今も大切に受け継がれています。
最近では、色鮮やかでカラフルな首里織が若い方にも注目され、愛用者が増えてきています。後継者も育ちつつあり、首里織の魅力が再評価されています。
藍や黄色のカラフルで上品な美しさ
首里織には、首里花倉織、首里道屯織(どうどんおり)、首里花織、首里ミンサー、首里絣といった種類があります。特に、首里花倉織は王族の妃や王女が着用し、首里道屯織は王族や貴族の男性が官衣として着用する格式高いものでした。
首里花織は、経糸(たていと)か緯糸(よこいと)、または両方を部分的に浮かせて花の模様に織っていく浮織の一種で、「両面浮花織」「緯浮花織」「手花織」「経浮花織」の4種類があります。
首里花倉織は、からみ織の一種である絽織(ろおり)や紗織(しゃおり)と花織で、市松や菱形模様に織り上げています。
織の技法は大きく2つに分けられます。
ひとつは紋織で、琉球王国の王族や貴族が着用する色鮮やかで格式高い最高級の織物。
もうひとつは、丈夫な作りで庶民に親しまれた絣織です。首里絣は、久留米絣などと並んで日本の絣織の原型のひとつとされています。
原材料の糸は、絹、綿、麻、芭蕉などの天然素材。染料は、亜熱帯である沖縄県に自生する、琉球藍、フクギ、ウコンなどが使用されています。
琉球藍は青系に、フクギ、ウコンは黄色系に染まります。また、藍には防虫効果があり、古くから野良作業の着物や風呂敷などに使われています。
首里織は古来より分業体制を取らず、全ての工程を手作業で行っています。現在でも、受け継がれた技法に基づいて多くの工程を手作業で行うため、少量ずつしか生産できませんが、時間と手間をかけて丁寧に作られた首里織は、着物や帯で人気があり、高く評価されています。
また、高級な着物だけでなく、もっと身近に使ってもらいたいという生産者の思いから、財布や名刺入れ、タペストリーやテーブルセンターといったインテリア用品など、さまざまな製品も開発されています。
着物からインテリア用品まで幅広く使われる首里織
琉球王国の上流階級で愛用された首里織は、主に着物や帯に使われています。特に、絹で作られた首里花織は、光沢ある模様が美しく上品で優美な雰囲気で人気があります。
また、麻で作られた着物は夏用に用いられます。
首里織の着物は、音楽鑑賞や観劇、食事会などに着用することができます。
半幅帯は、大人の浴衣にも合わせて楽しむ方も増えてきています。
その他にも、ネクタイやかりゆしウエア、名刺入れなどにも使われ、ビジネスシーンでも品よくまとまります。
沖縄の気候風土に合った首里織は、南国らしくカラフルで明るい色のものが多くあります。
着物や帯、ショールやかりゆしウエアとして華やかに着こなすことができ、その色合いを生かして小物入れやバッグ、のれんやテーブルセンターなどインテリアの差し色としても幅広く活用することができるといえます。
首里織の見学・体験ができる場所
那覇伝統織物事業協同組合
所在地 | 沖縄県那覇市首里桃原町2丁目64番地 |
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電話番号 | 089-887-2746 |
定休日 | 土・日・祝日 |
営業時間 | 9:30〜17:00 |
HP | https://shuri-ori.com |
備考 | 首里織の制作現場を見学することができます。 |
那覇市伝統工芸館
所在地 | 沖縄県那覇市牧志3-2-10 てんぶす那覇2F |
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電話番号 | 098-868-7866 |
定休日 | 毎週水曜日、12月29日〜1月3日 |
営業時間 | 9:30〜17:30 |
HP | https://kogeikan.jp |
備考 | 【体験メニュー】コースター:1,720円、ティーマット:2,570円、しおりマット(小):2,570円、ブックカバー:3,100円 |