天童将棋駒とは
天童将棋駒(てんどうしょうぎこま)とは、山形県の天童市を中心に作られている将棋駒です。天童将棋駒は山形市や村山市でも精力的に作られ、全国の将棋駒生産量のほとんどを担っているといわれています。
作り方は、木地作り・駒彫り・駒書きの3つに分業化。そのすべてを職人の手作業で進めるため、完成した天童将棋駒には職人の熟練した技術と熱意がこもっています。
天童将棋駒の歴史と武士の内職
天童将棋駒の始まりは、1830年代にまでさかのぼります。織田藩の藩主・織田信美が天童入りし、天童織田藩を成立させました。しかし、もともとあまり大きくない藩であったこと、凶作続きであったことなどが影響し、財政難にあえぐことに。
同時期、隣藩である米沢藩では大阪の駒師を招聘し、将棋駒作りを始めていました。そこで、天童藩は米沢藩を通じて、将棋駒の製造技術を習得。財政難から脱却するため、下級武士に将棋駒作りを伝え、内職として勧めていったといわれています。
もちろん「武士が内職するなんて、とんでもない!」という反対もありました。しかし、天童藩の御用人であった吉田大八が、将棋と兵法戦術との共通点を挙げ「将棋をたしなむことも、駒を作ることも、武士の矜持を損なうものではない」と説き伏せます。
そうして連綿と受け継がれてきた将棋駒作りの知識と技術は、時代が変わると共に進化を遂げていきました。昭和初期には、ついに将棋駒の生産量で全国トップに躍り出ます。1996年には国の伝統的工芸品指定を受け、今なお多くの将棋愛好家たちから愛される将棋駒を生産し続けているのです。
豊富な種類を取り揃える天童将棋駒の特徴
さまざまな観点から作り上げられる木地
作業工程の最初に行われる木地作りでは、単に駒の形を作るだけではありません。原木の割り方や削り方によって、木目の出方を変えています。木目の種類は、表面の木目が直線的な柾目(まさめ)や、柾目に斜めの文様が加わる斑(まだら)、そして木目の変化を楽しむことができる杢(もく)の33つ。特に杢の中でも「孔雀杢(くじゃくもく)」と呼ばれる木目は、ひととおり揃えるために数十本の原木が必要であり、生産数が少なく非常に珍しい将棋駒となっています。
ほかにも、色やつや、1枚の駒の重さなど、細やかな部分まで考えた木地作りがなされています。まさに、職人の素晴らしい技と熱い想いが詰まった芸術品といえるでしょう。
幅広いニーズに応える豊富な種類
天童将棋駒はいずれも高品質ですが、プロ棋士だけでなく、初心者でも手に取りやすい将棋駒も多いです。一般的に最も普及しているのは、木地に直接スタンプを押して文字をつける「スタンプ駒」。5,000円前後で購入できるため、将棋を始めてみたいという子供や、趣味として将棋を楽しみたいという方にぴったり。
中級品~高級品とされる書駒(かきごま)、彫駒(ほりごま)、彫埋駒(ほりうめごま)は職人の手で字を彫る・書く作業が加わるため、1万円以上となることが多いです。
さらに、最高級品とされる盛上駒(もりあげごま)は、彫った後に漆で文字を浮きだたせ、乾燥後に磨き上げるという、高い技術が必要な将棋駒。盛上駒の職人は全国で見ても非常に少なく、希少性の高さは随一です。そのため、安くても20万円以上かかるといわれています。
天童将棋駒の現代での使われ方とお手入れ方法
天童将棋駒は将棋の指し駒として使用されることはもちろん、縁起物としてリビングや玄関に飾られることもあります。飾り駒として利用される駒は、主に「馬」と「と金」。
馬は字を左右反転にした「左馬」という形をとります。これは、馬を逆から読むと「まう(舞う)」となり、めでたい席で催される舞をイメージしています。また、と金は「歩」の駒が敵陣で裏返って強くなる(金将になる)ことから、出世や成功といった意味が込められているのです。
天童将棋駒を手入れするときには、綿などの柔らかい布で空拭きします。汚れがひどいときには椿油(植物油)を1~2滴だけ布に染み込ませ、綺麗に拭き取ります。ただし、彫埋駒や盛上駒は漆をはがしてしまう恐れがあるため、油を使うとしてもごく少量とし、しっかりと余分な油を拭き取ることが大切です。
保管するときには、湿気の少ない場所を選び、駒の割れや反りを防ぎます。また、ほこりがつかないよう献上箱などをかぶせておきましょう。長期間の保管でロウの粉が浮き出てきたときには、やさしく空拭きすると綺麗になります。
天童将棋駒の見学・体験ができる場所
天童市将棋資料館
所在地 | 山形県天童市本町1丁目1-1 |
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電話番号 | 023-653-1690 |
定休日 | 毎月第3月曜日(祝日の場合は翌日)及び年末年始 |
営業時間 | 9:00~18:00(入館は17:30まで) |
HP | http://bussan-tendo.gr.jp/museum/ |
備考 | プロ棋士による指導教室(月1回程度)や初心者向け将棋教室があります |
中島清吉商店
所在地 | 山形県天童市田鶴町2-2-2 |
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電話番号 | 023-653-2262 |
定休日 | 毎月第2日曜日及び1月1日・1月2日 |
営業時間 | 9:00~18:00 |
HP | https://www.shogi-koma.com/ |
備考 | 駒づくり体験(予約制) 1,000円~ 毎週火・木・土曜日(受付16:00まで) |