内山紙とは
内山紙(うちやまがみ)とは、長野県奥信濃で製造されている和紙のことです。和紙の原料の中でも、繊維が太くて長い楮(こうぞ)を100%使用して作られています。楮は栽培が簡単で、奥信濃の山に豊富に自生。1年で2メートルにも成長します。
内山紙は、主に障子紙として昔から重宝されてきました。さらに、宮内庁で戸籍台帳用紙としても使用され、信頼が高い紙だったことがわかります。内山紙が重宝された理由は、内山紙の丈夫で長持ちする特徴にあります。
内山紙の原料となる、楮の繊維を乾燥させた後、豪雪を利用して凍結。楮の繊維を雪にさらすことで、自然な白さの和紙に仕上がります。もともと繊維が太くて長い楮を使用し、豪雪の厳しい環境下で和紙作りをすることで、丈夫で長持ちする内山紙が誕生しました。
奥信濃に住む多くの人々に生産されていた内山紙ですが、洋紙の普及により衰退。残った生産者たちが内山紙の伝統技術を受け継いでいます。1976年には、国の伝統的工芸品に指定され、知名度が全国に広がりました。
現在では、障子紙としてはもちろん、和紙文具や照明器具などのインテリアとしても使用され、多くの人に愛されています。
豪雪地帯の特徴を活かして誕生した内山紙の歴史
内山紙の由来は、資料が乏しくはっきりとはわかっていません。一説には、1661年に萩原喜右ヱ門が紙を漉く技術を習得したのが始まりといわれています。ほかにも、マタギが山に生えていた楮を使って紙を作り、その紙を売って生活していたともいわれています。
奥信濃で内山紙の生産が広がった理由は主に2つ。1つ目は、原料の楮が奥信濃の山に生えていたので簡単に手に入ったことです。楮は、栽培がしやすく、繊維も取りやすいので、和紙の原料に最適でした。
2つ目は、奥信濃の山が豪雪地帯だったことです。内山紙は、楮の繊維を雪にさらして作ることで、自然な白さを生み出し、丈夫で長持ちする和紙になります。奥信濃は、一晩で数メートルもの雪が積もる豪雪地帯なので、雪を使って作る内山紙作りには最適な環境だったといえます。
こうして作られた丈夫で長持ちする内山紙は、障子紙として多くの需要があり、高く売れました。現金収入につながったこともあり、奥信濃で冬の副業として広がりました。
しかし、明治時代に大量生産が可能な洋紙が普及すると、手間や労力がかかる内山紙の生産は衰退。多くの生産者が辞めていく中、残った生産者たちが現在でも伝統を受け継いでいます。
強靭で通気性に優れた内山紙の特徴
内山紙は原料に楮のみを使用し、奥信濃の豪雪を利用して作るため、丈夫で長持ちします。さらに、通気性、保湿に優れているのも特徴です。和紙の原料の多くは、木材パルプを使用。劣化しやすいとされる木材パルプとは異なり、楮は繊維が太くて長いため、丈夫な和紙に仕上がります。
夏には伸びた楮を刈り取り、冬には深い雪の上にさらします。雪にさらし、水で漉きあげることで風雪に耐えられる丈夫な和紙が誕生。昔ながらの手作業が優れた和紙を生み出します。
「楮の収穫」「楮を蒸す」「楮の皮剥ぎ」「凍皮・皮かき」「雪さらし」「煮熱(しゃじゅく)」「紙素打ち」「玉造り・小振り」「紙漉き」「乾燥」の主に10工程で内山紙が作られています。
良質な内山紙を作るためには、紙漉き、乾燥の工程が重要で、特に紙漉きの作業は紙の良し悪しを決める作業です。
紙漉きの作業は、山から湧き出る、澄んだ冷たい水を使用。手の切れるような冷たい水の中で、手を止めることなく常に前後左右に動かし続けることで、紙を作り出します。
こうして作られた内山紙は、日焼けしにくく、丈夫で長持ちするので障子紙として最適。長期間にわたって保存するための紙としても優秀です。
内山紙の現代での使われ方とお手入れ方法
内山紙は主に、障子紙や和紙、和紙文具などに用いられています。内山紙の代表ともいえる障子紙は、通気性や通光性に優れ、丈夫で長持ちすることから高い評価を獲得。生産者の減少や冬の限られた期間でしか製造していないため、希少性が高くなっています。
障子紙の張り替えは、湿度が高くなる梅雨から夏にかけての季節が最適です。湿度が高いと紙が水分を吸収するので張りやすくなります。また、障子はこまめな掃除が大切です。障子にホコリが溜まると、湿気を吸ってシミの原因になります。障子はホコリが溜まりやすいので、こまめに掃除をして綺麗に保ちましょう。
ほかにも、内山紙は照明器具などのインテリアとして使用されています。和紙で作られたランプシェードは、和紙ならではの温かい光と独特な陰影が楽しめます。和紙は古風なイメージが強い印象ですが、和風からモダンまでおしゃれなデザインが豊富。和室がない住宅も多い中、和室に限らず、洋室にも自然に溶け込むので人気が高まっています。
内山紙の見学・体験ができる場所
内山紙協同組合
所在地 | 長野県飯山市瑞穂6385 |
---|---|
電話番号 | 0269-65-2511 |
定休日 | 不定休 |
営業時間 | 9:00~15:00 |
HP | http://www.uchiyama-gami.jp/exprise.html |
備考 | 内山紙A3判4枚を作製。そのままランチョンマットとしても使用できます。 |
かみすき屋
所在地 | 長野県下高井郡木島平村穂高1143 |
---|---|
電話番号 | 0269-82-4151 |
定休日 | 不定休 |
営業時間 | 10:00~17:00 |
HP | http://kamisukiya.com/ |
備考 | 楮を使った紙漉き体験ができます。 |