読谷山花織とは
読谷山花織(ゆんたんざはなうい)とは紋織物の一種で、約600年という長い歴史をもつ沖縄の伝統工芸品です。
東南アジア由来の技術をもって、沖縄県中頭郡読谷村で独自に発展した読谷山花織。南国情緒あふれる雰囲気と色糸で浮かび上がる花模様が最大の特徴となっています。
模様は30種類ほどあり、主に織り出されている模様は「オージバナ(扇花)」「ジンバナ(銭花)」「カジマヤーバナ(風車花)」の3つです。
この3つの模様の組み合わせをアレンジしたり大きさを変えたりして、さまざまなパターンの読谷山花織が作られます。染料には自然由来のものが用いられ、緑や赤、青、黄、白など、あざやかな色が使われています。
すべて人の手で織られるため、同じ模様で織ったとしてもひとつとして同じものはできません。織り機でひとつひとつ織られるたいへん手間のかかる織物ですが、そのぶん質の高さや人の温もりなどが感じられます。
現在では着物の着丈地として織られるほか、コースターやテーブルセンターなどの土産物として人気です。
幻の花織とその復活
読谷山花織の起源は室町時代にまでさかのぼります。
今から600年ほど前の1420年ごろ、琉球では貿易が盛んにおこなわれていました。中国や東南アジア諸国と交易していくなかで、読谷山花織のもととなる絣(かすり)や浮織(うきおり)の技法が伝えられます。
その後、伝来した技法は読谷村で独自の発展を遂げていき、読谷山花織が誕生しました。
当時の読谷山花織は琉球王国の御用布とされていたため、王族や貴族、読谷山花織が織られている読谷村の住民などの限られた者しか手にできない織物でした。
しかし明治時代の廃藩置県により琉球王国が崩壊し、身分制度も廃止に。その影響から読谷山花織は衰退の一途を辿ります。
時代の波によって忘れ去られてしまった読谷山花織でしたが、1964年ごろ、読谷村の有志によって再びかつての勢いを取り戻すこととなります。
はじめは愛好会として活動し始めましたが、ついには読谷山花織事業協同組合へと発展。読谷山花織は読谷村の有志たちのおかげで、沖縄県指定無形文化財・経済産業大臣指定伝統的工芸品としても名が知れ渡るようになりました。
読谷山花織の復活に大いに貢献した与那嶺貞は人間国宝にもなっています。
ロマンあふれる読谷山花織の特徴
色糸で浮かせた花模様が特徴の読谷山花織。
実際に花自体を表現しているのではなく、色糸による幾何学模様で花のような美しさを表現しています。主な3種類の模様には、それぞれにちゃんと意味が込められています。
お金をイメージした「ジンバナ(銭花)」は裕福への願い、扇型の「オージバナ(扇花)」は子孫繁栄、風車のかたちの「カジマヤーバナ(風車花)」は長寿への願いです。
模様を表す糸には絹糸や綿糸を使用し、花綜絖(はなそうこう)を用いた「経浮(たてうき)花織」「緯浮(よこうき)花織」と「手(てぃ)花織」という技法によって作られています。
「経浮花織」と「緯浮花織」は経糸方向・緯糸方向に色糸を浮かせ模様を作り、「手花織」は手で色糸をすくいとって模様を表します。
これらの技法により、読谷山花織ならではの浮かび上がるような美しい模様ができあがっているのです。
また、読谷山花織はあざやかな色彩も特徴的です。染料には福木(ふくぎ)や車輪梅(しゃりんばい)、琉球藍などの天然由来のものを使用し、沖縄らしさのある独特な色合いが映し出されます。
着物の着丈地としても有名な読谷山花織ですが、昔から手ぬぐいもよく織られています。
手ぬぐいは読谷村では「ティサージ(手巾)」と呼ばれ、「ウムイ(想い)のティサージ」という、愛する人へ贈るプレゼントとして使われていました。女性は意中の男性のために、想いを込めて読谷山花織を織っていたのです。
「ウミナイ(祈り)のティサージ」というものもあり、これは中国や本土に旅立つ人の安全を願って作られていました。
そんなロマンチックさも魅力的な、南国情緒あふれる読谷山花織は、沖縄の土産品としてもおすすめの織物です。
現代の読谷山花織とお手入れ方法
主に着物やコースター、テーブルセンター、小銭入れなどとして使用されている読谷山花織。
読谷山ミンサーという織物もあり、こちらも読谷山花織と同じころに誕生しました。「ミンサー」とは細い帯のことで、現在では主に花瓶敷きとして使われています。
読谷山花織は、織るのに手間がかかることや生産規模の縮小などからたいへん希少価値が高いともいわれている織物です。
そんな価値あるものをずっと使い続けるためには、日々の使い方やお手入れが大切です。
読谷山花織は素材に絹糸を使用しており、湿気に弱いという面もあります。
お手入れとして、脱いだ後の着物は2〜3時間日陰に干して風にさらし、汗のにおいなどを防ぐなどの対策をしましょう。
読谷山花織の見学・体験ができる場所
読谷山伝統工芸センター(読谷山花織事業協同組合)
所在地 | 沖縄県中頭郡読谷村字座喜味2974-2 |
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電話番号 | 098-958-4674 |
定休日 | 日・祝祭日 |
営業時間 | 平日・土曜9:00〜17:00 |
HP | http://www.yomitanhanaori.com/ |
備考 | 【体験メニュー】コースター作り体験(グーシ花のコースター)1,500円)ができます。 |
沖縄県立博物館・美術館
所在地 | 沖縄県那覇市おもろまち3丁目1番1号 |
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電話番号 | 098-941-8200 |
定休日 | 月曜日 |
営業時間 | 火・水・木・日曜日9:00〜18:00 |
HP | https://okimu.jp/ |
備考 | 読谷山花織の現物を見ることができます。 |