堺打刃物とは
堺打刃物(さかいうちはもの)とは、大阪府堺市と大阪市、その周辺の地域で発展してきた刃物製品です。日本刀の製造技術を基盤とした伝統的な製法で、包丁やハサミなどが作られています。
秀逸な切れ味と使い勝手の良さから、国内の料理人のほとんどが愛用するといわれる堺打刃物。最近では、海外での日本食ブームの影響もあり世界の料理人からも注目されています。
徳川幕府の専売品になった堺打刃物の歴史
堺打刃物の歴史は大変古く、その起源は古墳時代の400年代といわれます。当時、堺市内にある日本最大の前方後円墳「仁徳天皇陵古墳」をはじめ、多くの古墳が作られます。その際、鋤(すき)や鍬(くわ)などが多く必要となり、道具を製造する職人が住み着き技術を高めました。
1543年、ポルトガル人によって日本にたばこや鉄砲などが伝来。その影響から、高い金属加工技術を持つ堺では鉄砲が生産され、戦国時代には鉄砲の一大生産地になりました。
1500年代後半から、たばこの葉を切る「たばこ包丁」を生産が堺で盛んになります。その鋭い切れ味は「石を割るほどの切れ味」といわれ大変評判でした。徳川幕府は堺の職人が作るたばこ包丁に「堺極(さかいきわめ)」という印を与え幕府専売品に。これにより、日本全国に堺の刃物の名声が知れ渡ることになりました。
江戸時代中期には出刃包丁が作られ、その後、用途に合わせ大変豊富な種類の料理用の包丁が登場しました。近年、たばこ包丁の需要は機械化などにより激減しました。しかし、伝統の技により研ぎ澄まされた「堺打刃物」は、現在、料理用の包丁として多くの料理人に高く支持されています。
1982年には、堺打刃物の優れた伝統技術と伝承が認められ、国の「伝統的工芸品」の指定を受けています。
地金と刃金によって生み出される堺打刃物の特徴
職人の手仕事で作られる堺打刃物の材料は、主に「地金」(軟らかい鉄)と「刃金」(鋼)です。2つの金属を接着させることで、強度としなやかさが共存する刃を作り出します。
包丁の製造工程は基本的に「鍛造(たんぞう)」「研ぎ(刃付け)」「柄付け」の3つ。各工程をそれぞれ専門の職人が行う分業制度になっています。
「鍛造」は、金属を炉に入れて赤く熱し、ハンマーで叩き延ばし成形する技法。叩き圧力を加えることで、金属内部の組織が密になり強度と粘り強さが増します。また、一流の切れ味に加え、美しい模様も生み出されます。
「研ぎ(刃付け)」では、刃研ぎや研磨を行い刃先を鋭利にします。「柄付け」は研ぎ上げられた包丁に柄を付ける作業。柄の穴と包丁の中子(柄に入れるハンドル部分)を熱し、柄の下部を木槌で叩きながら取り付けます。
包丁の形状は「片刃」と「両刃」の2種類があります。「片刃」は日本刀と同様の刃の片側だけを研いだ形状で、江戸時代中期に堺で開発され、現在でも堺打刃物の主流。「片刃」は鮮やかな切れ味が特徴で、魚など柔らかい食材の断面も美しく仕上げます。また、食材の旨味を閉じ込め、切った食材が包丁から離れやすいなど優れた機能性を持ち合わせています。
「両刃」は刃の両側を研いだ形状で、洋包丁や家庭用など一般的な包丁の形状。両側に刃が付いているため、真っすぐに切れやすく扱いやすい形状です。「片刃」は専門的な処理に向き、「両刃」は基本的に万能で家庭でも使いやすい包丁です。
堺打刃物の現代での使われ方とお手入れ方法
堺打刃物は、さまざまな種類の包丁やハサミを製造しています。包丁は主にプロの料理人や、料理にこだわる人が使う専門的な包丁として使われています。また、最近では一般の家庭でも使いやすく、現代の食生活に合った包丁も数多く開発されています。
専門的な包丁は、魚をさばく「出刃包丁」、刺身を造る「柳刃包丁」「たこ引包丁」、野菜を切る「薄刃包丁」など。また、ハモやウナギ、麵を切る包丁など、用途に合わせた包丁があります。また、同じ用途であっても地域によって形状が異なる包丁も多数あります。
一方、家庭で使用する万能な包丁の代表は「三徳包丁」です。ほかに、ヨーロッパから伝わる形状の「牛刃包丁」、野菜や果物の皮むきなどに用いる「ペティナイフ」なども作られています。
堺打刃物のハサミも、抜群の切れ味と持ちの良さから大変人気があります。生け花や植木、園芸など、種類豊富なハサミが堺の職人技によって作られています。
堺打刃物の包丁に使われている刃金(鋼)は錆びやすい性質を持っています。そこで、お手入れで重要なことは、きれいに洗い水気を取って錆びさせないことです。使用後は中性洗剤で洗い、乾いた布でしっかり拭きましょう。錆が出た場合、早めにスポンジに付いている研磨剤入不織布で磨くと良いでしょう。
包丁の研ぎはまめに行いましょう。切れないと感じる時は傷みが激しい状態です。そうなる前に研ぐようにしましょう。お手入れは自宅でできますが、職人による研ぎ直しや修理も基本的に可能です。
堺打刃物の見学・体験ができる場所
堺刃物ミュージアム
所在地 | 大阪府堺市堺区材木町西1丁1番30号 堺伝統産業会館2階 |
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電話番号 | 堺刃物商工業協同組合連合会 072-233-0118堺市ものづくり支援課 072-228-7534 |
定休日 | 年末年始 |
営業時間 | 10:00 ~ 17:00 |
HP | https://www.sakaihamono.or.jp/museum01.html |
備考 | 展示、実演、販売 |
榎並刃物製作所
所在地 | 大阪府堺市堺区九間町西2丁目2-25 |
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電話番号 | 072-233-0217 |
定休日 | 日曜日、祝日 |
営業時間 | 7:00~17:00 |
HP | https://www.facebook.com/%E6%A6%8E%E4%B8%A6%E5%88%83%E7%89%A9%E8%A3%BD%E4%BD%9C%E6%89%80-1453715398260877/ |
備考 |
見学、体験 ※要予約 【体験】3月から11月の第2・第4日曜日のみ 【料金】見学は要相談、体験は1万5千円(包丁代含む) |